(23日、第107回全国高校野球選手権奈良大会準々決勝 橿原11―6橿原学院) 先発した橿原学院のエース、山本大夢(ひろ…

(23日、第107回全国高校野球選手権奈良大会準々決勝 橿原11―6橿原学院)

 先発した橿原学院のエース、山本大夢(ひろむ)(3年)は初回、先頭打者に四球を与えると、単打に死球や暴投が重なり、いきなり3点を失った。三回に5点を奪われたところで交代を告げられ、左翼の守備についた。

 「打たせて取る」。試合前はそのつもりだったが、走者を抱えると「抑えたいという気持ちが強く出て、制球が乱れてしまった」と悔やむ。

 9点差で迎えた七回裏。このまま終わるとコールド負けだが、打線が3点を取り返しそれを許さない。さらに1点を返した八回裏が終わった時点で、他の投手はすでにベンチに下がり、投げられるのは自分だけに。仲間がつなげてくれた再登板に覚悟を決めた。

 「エースナンバーの投球をみせる」。チームに勢いをつけようと、速いテンポで押し切る。四球を与えても、今度は崩れない。打者4人で0点に抑えて裏の攻撃につなげた。

 昨秋から背番号1をつける。今春の県大会で4強に入り夏のシード権を獲得できたが、山本自身は制球に苦しんだ。5月、監督からサイドスローへの転向を提案された。

 「やるしかない。迷いはなかった」。自主練習ではネットに向かって繰り返し投げ、練習が終わっても鏡の前でフォームを確認する。球速は全体的に5キロほど落ちた。でも、得意のスライダーが右打者の内から外へ曲がるようになり、「しっくりきた」。制球も安定した。

 この日、九回裏2死二塁で打席が回るも、三邪飛に倒れて試合終了。「先発として役割を果たせずに負けた」と涙が止まらなかった。それでも、春から試行錯誤してきたエースに谷車竜矢監督は「厳しいことを言われても、なんとかしようとする姿を見てきた。一生懸命やってくれた」とたたえた。(周毅愷)