<第107回全国高校野球選手権鹿児島大会:樟南8-3鹿屋中央>◇22日◇準々決勝◇平和リース球場 樟南の右腕・犬窪晴人、…

<第107回全国高校野球選手権鹿児島大会:樟南8-3鹿屋中央>◇22日◇準々決勝◇平和リース球場

 樟南の右腕・犬窪晴人、鹿屋中央の左腕・溝淵爽。今大会を代表する屈指の3年生左右両腕の出来が勝敗のポイントになると予想した一戦だったが、勝敗を分けたのは勝負所でのバントの精度と、2番手投手の力量の差だった。

 5回までは樟南がペースを握る。2回に8番・犬窪が自らのバットで先制点を叩き出し、犠飛で2点を先取した。流れが大きく変わったのがグラウンド整備直後の6回表。鹿屋中央は8番・松元裕樹(3年)、1番・君島虎太郎(3年)が粘り強く打って、一死一三塁。この試合で初めて三塁まで走者を進めると、3番・秋田心(3年)が会心の走者一掃中越え三塁打で逆転に成功した。

 5回まで好投を続けていた犬窪は足がつり、背番号10の2番手・五反田流星(3年)が後を引き継ぐ。鹿屋中央は二死一三塁から重盗を仕掛けたが、樟南が見事な連係プレーでこれを刺し、流れを断ち切ると、6回裏に7番・篠原流依(3年)の右越え二塁打で同点。7回は相手のバント処理ミスで勝ち越し、4番・迫山寛汰(3年)の左前2点適時打で更に畳みかけ、8回にも2点を加えた。リリーフした五反田が6回以降は無得点で切り抜け、樟南が4強入りを果たした。

 大きな勝敗の分かれ目は7回、一二塁の場面で送りバントの成否にあったとみる。表の鹿屋中央は一死一二塁で送りバントを仕掛けたが失敗。その裏の樟南は無死一二塁から3番・塚原隼成(3年)がいとも簡単に送りバントを決め、走者を進めた上に、相手のバント処理ミスで勝ち越し点まで手に入れ、4番・迫山の適時打につなげた。

 「緊張しました」と塚原。「送るだけでいいから」と山之口和也監督に言われたが、明らかに送りバントのシチュエーションで、決め切るのは言うほど簡単ではない。それでも塚原は「自分は目立つ打者じゃない。バントの練習はこだわってやってきた」成果を大一番でみせた。8回にも同じように一死一二塁の場面で、今度はセーフティー気味に一塁方向に送りバントを決めて、追加点につなげている。

 樟南の各打者が「溝淵対策」で打者席のホームベース側ギリギリのところに立ち位置を工夫していたのも、隠れた好プレーだった。左腕・溝淵は右打者の膝元に落ちるスライダーを武器にしている。これを封じるために「内角球が来たら肩を入れて投げにくくさせようと打者同士で話をしていた」(塚原)。2回の先制点、6回の同点、7回の勝ち越し点はいずれも右打者の死球がきっかけだった。

 2番手・五反田は最速140キロ超の直球が武器。これにタイミングを外すスライダーを織り交ぜた緩急を持ち味としている。スライダーが切れすぎてワンバウンドし、暴投になることも多く、本来は背番号1を背負うほどの実力者だったが、今大会は10番に甘んじた。その悔しさをぶつけ大一番をモノにする原動力となった。「ようやく自分らしい持ち味を出せるようになった」(山之口監督)。

 2年連続の決勝進出をかけ、昨夏決勝で相まみえた王者・神村学園に挑む。「相手云々よりも、まずは自分たちの野球をしっかりやること」を山之口監督はポイントに挙げる。昨夏決勝もスタメンで出場し、敗れた悔しさを味わっている塚原は「神村学園の連勝を止めるのは自分たちという意気込みでぶつかっていく」と燃えていた。