(23日、第107回全国高校野球選手権岐阜大会準々決勝 県岐阜商10―3多治見工=7回コールド) 初回、猛攻を受けて一…

 (23日、第107回全国高校野球選手権岐阜大会準々決勝 県岐阜商10―3多治見工=7回コールド)

 初回、猛攻を受けて一挙に8点を奪われる。だが、ベンチスタートだった多治見工の主将・成木脩投手(3年)はひるんではいなかった。「絶対取り返して勝つ」。青木崇監督から「次の回から行くぞ」と告げられると、さらに燃えた。「投げたい気持ちでいっぱいでした」

 二回に登板し、先頭打者は相手の四番。腕を大きく振って内野ゴロに打ち取る。次打者には安打を浴びたが、強肩の田川翔太捕手(3年)が矢のような送球で二盗を阻止。この回を打者3人で切り抜け、相手の流れを止めた。リードする田川捕手は「成木の持ち味を生かして強気にいきました」。

 そこから多治見工の反撃が始まる。四回と五回に計3点を奪い、スタンドを沸かせた。

 七回コールド負けにはなったが、青木監督は「誰もが五回コールドだと思うような試合を七回まで作ってくれた。さすが主将だ」とたたえた。

 主将に選ばれたのは昨秋。全員から推薦されたという。「成木に頼みたい、と言ってくれて。すごくうれしかったです」。青木監督は「うちの野球部は人を大切にしています。彼は誰に対しても優しい。きちんと最後までやり通してくれる」と評する。

 成木主将は「上も下も関係なくみんなで考えて作っていくチームを目指していたので、みんなの意見を採り入れてきました」と振り返る。

 大会前は練習試合で結果が出ず、「とにかく辛かったです」。部員たちと話し合った。「取れるアウトをきちんと取る」「投手はバックを信じて打たせて取る」という方針を決めた。チームは徐々に上向き、今大会では優勝候補の岐阜城北を破って堂々の8強に入った。

 「中学校の時は結果が出なくて野球が楽しくなかった」と話す。だが多治見工野球部では礼儀や作法、言葉遣いなども学ぶことができたと感謝している。「すごく楽しく野球ができました。後輩たちにはベスト8の常連になれるよう頑張ってほしいです」(高原敦)