(23日、第107回全国高校野球選手権東東京大会準々決勝、関東第一10―1江戸川=7回コールド) 負けても笑顔だった。都…
(23日、第107回全国高校野球選手権東東京大会準々決勝、関東第一10―1江戸川=7回コールド) 負けても笑顔だった。都立で唯一勝ち残っていた江戸川が、昨夏覇者の関東第一にコールド負け。それでもみんな、悔しさより楽しさが勝(まさ)っていた。
シード校ながら「挑戦者」として臨んだ夏。対する関東第一はノーシードだが、昨夏の甲子園準優勝校。やはり強かった。
一回裏、先発した平野龍之介(3年)の立ち上がりを一気に攻められる。3点を失ったところで、エースの石橋諒樹(同)がマウンドへ。「何としても流れを変えたかった」。だが、2点適時打を浴び、この回5点を失った。
ただ、気持ちでは負けなかった。「絶対に相手にのみこまれない」と立ち直り、二、三回は無失点に抑えた。四回には連打で4点を、五回にもさらに1点を失ったが、堅守を見せベンチに戻る仲間たちを、エースは笑顔で迎えた。
ベンチメンバーでただ一人、都外出身。「学校生活が楽しそう」と千葉県から都立校に入学した。昨夏も主戦として投げたが、大会後にひじを痛め、苦しい時期を過ごした。冬、下半身を鍛え、球速は139キロにアップ。背番号1を任された。
第3シードで臨んだ夏。初戦の3回戦、墨田工科との継続試合を再開後に逆転して勝利。4回戦は成城を逆転サヨナラでくだした。芝英晃(ひであき)監督が「最後まで粘って、1試合ごとに成長していった」という戦いぶりを見せた。
この日の準々決勝。相手は同じ江戸川区内にある「ご近所」の私学強豪。昨夏、関東第一が甲子園で準優勝し、盛り上がる街の様子を選手たちは目にしてきた。
「関東第一を倒したらすごい。やってやろう」と主将の叶内(かのうち)駿輔(同)。9点を追う五回、振り抜いた初球は三塁打となり、適時打で生還。1点奪い、ゼロでは終わらせなかった。
「私学との差を感じた。すべてが徹底されていた」と叶内。だが、「都立校で甲子園1勝」というチームの目標に、近づいたとも感じる。全力で打って、投げて、走った。「最高に楽しかった」。だから、泣く選手はいなかった。
スタンドからは関東第一に負けない声援が聞こえた。試合後、石橋諒は「みんなすごく応援してくれて……。江戸高(えどこう)に来て本当によかった」。そう言ったとき、涙が止まらなくなった。=神宮(石平道典)