(23日、第107回全国高校野球選手権埼玉大会準々決勝 浦和実8―1伊奈学園) ここで2点を奪えなければ、伊奈学園の夏は…

(23日、第107回全国高校野球選手権埼玉大会準々決勝 浦和実8―1伊奈学園)

 ここで2点を奪えなければ、伊奈学園の夏は、コールド負けで終わる。

 七回表2死二塁。3人目の投手として登板していた茂木颯太投手(3年)が、この日初めて打席に入る。

 大事な場面で安打なんて全く打ったことがない。でも今この瞬間だけは――。祈るような気持ちでバットを握った。

 ふと、二塁に視線を向けると、武井晴希選手(3年)の姿が目に入った。同学年の投手陣として、高め合ってきた。

 「お前を、準決勝のマウンドに立たせないとな」。自然と緊張が解け、低めの変化球を振り抜いた。

 この一打が中越えの三塁打になり、武井選手を本塁にかえした。だが反撃はここまで。あと1点足らずスコアボードには×が表示された。

 今大会、公立で唯一の8強入りを果たした伊奈学園。昨夏の1回戦負けから、夏の甲子園の初出場を視界に捉える快進撃をみせたが、まだ届かなかった。

 それでも「秋、春と16強止まりだったチームがここまで来られた。みんなには感謝しかないです」。茂木投手は胸を張った。(恒川隼)