(22日、第107回全国高校野球選手権大阪大会5回戦 阪南大3―2近大付) 九回裏2死一塁、守るリードは1点。相手打者の…

(22日、第107回全国高校野球選手権大阪大会5回戦 阪南大3―2近大付)

 九回裏2死一塁、守るリードは1点。相手打者の打球が一、二塁間を抜けてきた。打球を処理する近大付の右翼手、梶原哲真主将(3年)に気の緩む時間はなかった。

 走者二、三塁になった後、打球が左翼手の頭を越えていった。2人が返り、サヨナラ負け。「信じられない」。しばらく受け入れられなかった。

 1年生の時から投手としてベンチ入りした。だが2年生の春、練習中に左ひじにけがを負った。

 投手を続けるなら手術しかないが、手術をすれば長いリハビリが必要だ。もう高校野球はできなくなる。「この仲間と野球ができるのは今しかない」。野手への転向を決意し毎日、自主練の時間もノックを受け続けた。プレー以上にその姿勢を買われ、藤本博国監督から主将に選ばれた。

 サヨナラ負けに仲間たちの涙が止まらないなか、表情を崩さずにグラウンドを去る準備を続けた。思いはこみあげていた。「本当に悔しい。このチームでもっと野球ができると思っていた」。最後まで涙は見せなかった。(渡辺萌々香)