<全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島実2-1鹿児島工>◇21日◇準々決勝◇平和リース球場 8回表二死二塁、スコアは1対…

<全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島実2-1鹿児島工>◇21日◇準々決勝◇平和リース球場

 8回表二死二塁、スコアは1対1の同点。鹿児島実と鹿児島工、互いに譲らぬ緊迫した一戦のヤマ場を迎えて、「エース」VS「4番」の見ごたえある好勝負が繰り広げられた。

 打席に立ったのは鹿児島実の4番・前田大成(3年)。それまで3打席凡退だったが「これまでバットを振り込んできた自分を信じて、自分が決める!」一念で臨んだ。

 マウンドは鹿児島工の絶対的エース・不笠宗太郎(3年)。一塁が空いていたが「申告敬遠は考えなかった」。この試合、強打の鹿児島実に対して厳しく内角を突く投球が冴え、自分の間合いで小気味よく抑えていた。

 2ボールからファウルを1つはさんで、4球目は強気の内角直球が絶妙なコースに決まる。前田大は全く手が出なかった。

 勝負の5球目。いろんな選択肢が考えられた中、不笠が選択したのは内角直球。4球目より、更に内側を突いたが、「前田君が身体を開いて打つのが見えた」。鹿実4番の意地の気持ちが乗った打球が、一塁強襲の適時二塁打となり、終わってみれば、これが決勝点となった。

 前田大は足首の疲労骨折で5月の県選抜大会は出られず、今大会も打撃が振るわず、3回戦・尚志館戦は5番に打順を下げられた。そんな悔しさも、好投手・不笠から勝負を決める一打を放つエネルギーになった。

 「ナイスピッチング!」。試合後に整列してあいさつした時、前田大は不笠に声を掛けた。「ありがとう」。不笠は返した。敗れはしたが、高校最後のマウンドで、最高の投球ができた手応えがあった。だからこそ「大学でも野球を続けて、グレードアップした投手になりたい!」夢も芽生えた。