サンティアゴ・ベルナベウで行なわれたリーガエスパニョーラ第9節レアル・マドリード対エイバルの一戦は、3対0とホーム…

 サンティアゴ・ベルナベウで行なわれたリーガエスパニョーラ第9節レアル・マドリード対エイバルの一戦は、3対0とホームチームが力の差を見せつけ、今季リーグ戦ホーム2勝目をあげた。

 正直、この試合で乾貴士が先発で出場するかどうかは半信半疑だった。



レアル・マドリード戦にフル出場した乾貴士(エイバル)

 なぜなら、守備が崩壊し連敗を続けていたホセ・ルイス・メンディリバル監督率いるエイバルは、前節のデポルティーボ・ラ・コルーニャ戦から、サイドの選手を起用しない5-3-2、もしくは3-5-2の守備を重視したシステムで戦っていたからだ。2トップには、システム変更以前から起用されている前線で体の張れる体格のあるFWセルジ・エンリッチとキケ・ガルシアがおり、乾はジョーカーとして途中出場で起用される可能性が高いと思っていた。

 確かにデポル戦は新システムで0対0と引き分け、守備の改善が見られた。だが、守備的な選手を多く起用した副作用として、攻撃が単調なサイドからの放り込みだけとなり、物足りなさを感じさせるものだったことも否定できない。サッカーは相手よりも1点でも多く得点を取ることで勝利を手にすることができるスポーツだ。

 攻撃を活性化する前線でリズムを作れる選手、仕掛けることができる選手がエイバルには欠けており、相手守備を剥がすことのできる力を持つ乾は、その条件を満たしている選手のひとりだと思われる。だが、欧州にきてからの乾はサイドを主戦場にしており、メンディリバルがこれまで一度も試したことないポジションで日本人を起用するかどうか、わからなかったのだ。

 結果としてレアル戦、乾はシャルレスと2トップを組み、先発11人に名前を連ねた。チームが無得点で敗れただけに高評価を与えることはできないが、フル出場をしたことを考えると、メンディリバル監督も一定の評価を与えたと言えるだろう。

 乾にはミスもあったが、前半から相手ディフェンダーに対して意欲的に勝負を仕掛けていき、後半には、精度は別としてチーム最多となる3本のシュートを放った。欧州王者のレアル・マドリードを相手に、怖じけることなくゴールを目指していた。その闘争心を象徴するように、58分には諦めることなくGKキコ・カシージャにプレッシャーをかけていたし、61分、結果としてカバーに入ったカゼミーロに奪い返されたものの、カゼミーロとダニ・セバージョスの2選手を抜き去るプレーを見せた。

 この日はカゼミーロとマッチアップする場面が多かった乾。55分にはエリア内でブラジル代表MFに倒される場面があった。議論を呼ぶプレーだったが、試合後のミックスゾーンで乾は「あれは(PKは)ないっす。まあ、ちょっと当たっていましたけど、別に倒れるほどじゃないんで。でも、もらう方がチームとしていいかなと思ったので、ちょっともらいにいきましたけど」と説明した。

 このプレーについてメンディリバルは「乾に聞いたが『当たっていない』と言っていた。嘘をつかないことは人として本当にいいことだし、サッカー選手の多くは騙すようなことをするのに彼はしない。ただ、少し勝負の術を知らないと……」と、日本人に狡猾さを身につけることを注文している。

 この夜、エイバルはレアル・マドリードの前に力負けした。数字だけが重要だと言うつもりはないが、新ポジションの乾は形に残る結果を残せなかった。ただし、他のチーム相手にも通用しないと判断するのは時期尚早だ。

「いろいろなところに動きながら、相手の嫌なところで受けて前を向くのが自分の特徴だし、小・中・高とやってきたことなので、自分自身も今のフォーメーションならそこで挑戦したいし、中盤の一角でもいいし、新しいところで何か挑戦したいという気持ちがあります」

 欧州では新ポジションとなるFWでのプレーに、乾自身は手応えを感じているし、強い意欲を持っている。

「サイドばっかりやっていたので、FW、トップ下をやらせてもらえるのか(まだわからない)。中盤の一角のポジションも自分としては学んでいきたいことです。でも、そんなことは自分の個人としての考えなので、そこに関しては別にわがままを言えないので、使われるところでしっかりチームのために頑張りたいなと思います」

 乾にとって出場機会が減る可能性も十分にあるエイバルの新システム。しかし、そのシステムでしっかりとレギュラーに定着したときには、選手としてさらなる成長を遂げる力になるはずだ。