文:座間辰弘(ラリーズ編集部)写真:getty images【大会総括】36歳のティモ・ボルが中国選手を連破。決勝はドイツ対決に。ベルギーのリエージュで10月22日まで行われた今年の男子ワールドカップは波乱づくしとなった。36歳のティモ・ボ…

文:座間辰弘(ラリーズ編集部)
写真:getty images

【大会総括】36歳のティモ・ボルが中国選手を連破。決勝はドイツ対決に。

ベルギーのリエージュで10月22日まで行われた今年の男子ワールドカップは波乱づくしとなった。36歳のティモ・ボル(ドイツ・10月度ITTF世界ランク5位)がアジアカップ覇者の林高遠(中国・同9位)、今年の世界選手権覇者の馬龍(中国・同1位)を破り、決勝へ進んだ。

同じく決勝に進んだオフチャロフ(ドイツ・同4位)は、準々決勝でシバエフ(ロシア・同41位)、準決勝でサイモン・ゴジ(フランス・同13位)とそれぞれフルゲームの試合を制し、苦しみながら勝ち進んだ。

ドイツ選手同士の対決となった決勝戦は、ボルの勢いを上回る超攻撃的プレーでオフチャロフがゲームカウント4-2で勝ち、優勝した。

中国のホープ、林高遠は、準々決勝でボルと対戦。ゲームカウント3-3で迎えた最終セット、ポイント10-4でボルを追いつめたが、度重なるマッチポイントを活かすことが出来なかった。唯一のマッチポイントをボルに攫われ、屈辱的な敗退となった。

優勝候補の馬龍は、バックのブロックで相手の攻撃をしのぐラリーが多く、いつもより消極的なプレーが続いた。中国オープンの欠場、4年に一度の全中国大会での消耗、超級リーグの開催が不透明でここ3ヶ月間のITTFプロツアーに出場していなかったことなども一因となっているだろう。

馬龍は、準決勝でボルにゲームカウント3-1でリードするも、相手のカウンタープレーが光りカウント3-3と追いつかれる。ポイント8-10でマッチポイントを握られるなか、得意のフォアハンドで10-10まで食らいついたが、最後はフォアハンドが2本オーバーし、力つきた。

「(ボルとの敗戦後)がっかりしたけど、来ているオーディエンスの為にもベストなプレーをしようと思った」と語った馬龍は、3位決定戦でゴジにゲームカウント4-2で辛勝。ゴジは、1994年に優勝したガシアン以来となるフランス選手のワールドカップ優勝には届かなかった。

水谷隼、丹羽孝希は準々決勝で敗退。

上位進出を期待された水谷隼はゴジにゲームオールの激戦の末敗れ、丹羽孝希は馬龍にゲームカウント1-4で敗退した。揃って準々決勝での敗退となった。

水谷隼は、決勝トーナメント1回戦でアルナ(ナイジェリア・同36位)にゲームカウント4-0と快勝し、幸先のいいスタートを切った。身体のキレも良く、前陣での攻撃的な卓球スタイルが出来ていた。

しかし、ゴジとの対戦では早い展開のラリーで得点できない場面が続いた。また、9点以上取っても、なかなかゲームを奪えず、悔しさを思わずにじませる場面もあった。最後は、打ち損じてネット際に高く上がったボールをゴジに確実に決められた。

丹羽孝希も試合前にリラックスして笑みを浮かべるなど、良い精神状態で試合に臨んでいた。決勝トーナメント1回戦では、今年の世界卓球ドイツ大会で男子シングルス3位となった李尚洙(韓国・同16位)と接戦となり、マッチポイントを握ってから猛追されるが、最後は切れ味の鋭いバックハンドで試合を決めた。

丹羽は準々決勝、国際大会では10回目となる馬龍との試合では、高速フォアハンドでノータッチエースを決める場面もあったが、ラリー戦で馬龍に押し切られ、2012年の五輪アジア予選会以来の勝利とはならなかった。

ITTF男子チームランキングでは、1位中国のあとに、2位ドイツ、3位日本、5位フランスと続く。アジアとヨーロッパの実力は以前より拮抗している。また、地元ベルギーの選手やアメリカの10代の選手がグループリーグで世界のトップ選手と互角に戦うなど、世界各国で強化が進んでいる様子が見て取れた。

今回のワールドカップは、ヨーロッパ卓球の強さと、若手選手の台頭を示す大会となった。

卓球ワールドカップとは?

世界各国のトップ選手を集めて開催される卓球界で権威ある試合の1つ。世界のトップ選手20人を集めた男女シングルスが毎年、団体戦が隔年開催されている。

シングルスは開催年の世界選手権優勝者、各地域のコンチネンタルカップを勝ち上がった選手に出場権があり、その他に開催地のホストプレイヤー、ITTFが独自に選抜するワイルドカードという出場枠がある。

昨年のワールドカップ(アメリカ・フィラデルフィア)では、女子は当時16歳の平野美宇が最年少で優勝。男子は当時19歳の樊振東(中国・同2位)が優勝している。

最終順位

1位:ティモ・ボル(ドイツ) 2位:オフチャロフ(ドイツ) 3位:馬龍(中国) 4位:サイモン・ゴジ(フランス)
ベスト8:水谷隼、丹羽孝希、林高遠(中国)、シバエフ(ロシア)

主な試合結果

決勝
オフチャロフ(ドイツ)4(-10,8,7,-9,7,2)2ボル(ドイツ)

3位決定戦
馬龍(中国)4(5,-11,-6,5,7,9)2ゴジ(フランス)

準決勝
馬龍(中国)3(6,9,-9,9,-7,-5,-10)4ボル(ドイツ)
オフチャロフ(ドイツ)4(-6,2,8,-10,-7,4,8)3ゴジ(フランス)

準々決勝
林高遠 (中国) 3 (5,11,-9,9,-9,-12,-11) 4 ボル (ドイツ)
シバエフ(ロシア) 3 (9,8,-10,-9,-7,10,-7) 4 オフチャロフ(ドイツ)
水谷隼 3 (-7,6,-11,11,-9,7,-8) 4 ゴジ (フランス)
丹羽孝希 1 (-11, -9, -5, 9,-8) 4 馬龍 (中国)

1回戦
水谷隼 4 (6,7,6,7) 0 アルナ(ナイジェリア)
丹羽孝希 4 (5,10,-8,-2,6,9) 2 李尚洙 (韓国)

※試合結果の見方

表記ルール: 選手名A ゲーム数(各ゲームのポイント)ゲーム数 選手名B

各セットのポイントの表記例: 選手Aが選手Bと対戦し、1ゲーム目11対6、2ゲーム目11対5、3ゲーム目12対10で選手Aが勝ち、選手Bが負けた場合、
「選手A 3(6,5,10)0 選手B」 または 「選手B 0(-6,-5,-10)3 選手A」 と表記。