能登半島地震で被災した石川県能登町。7月4日、ソフトテニスの強豪・能登の練習が、本拠地とする運動公園で行われていた。高…
能登半島地震で被災した石川県能登町。7月4日、ソフトテニスの強豪・能登の練習が、本拠地とする運動公園で行われていた。高校総体には男女で団体・個人(ダブルス)計7組を送り出す。コート奥の多目的広場には、仮設住宅が立ち並んでいる。
「諦めずに」「もっと前で!」。練習相手にラリーを続けていたのは岩見莉歩、宮下日香莉の両選手(3年)。鋭いストロークで甘い返しを誘い、スマッシュを決める。そんな試合運びを得意とし、6月の県大会で女子165組の頂点に立ち、3度目の総体出場を決めた。
1年生の頃からペアを組む2人は、中学時代はライバル同士。県大会で常に上位を争う関係だった。
能登町で生まれた宮下選手は、ソフトテニスをしていた兄と姉の影響で小学1年からラケットを握り、きょうだいが進んだ地元高への進学に迷いはなかった。南西に約60キロ、能登半島の付け根にある 宝達ほうだつ 志水町出身の岩見選手は「全国の上位を目指せる」と同じ進路を選び、入寮した。「かみ合えば、日本一が見えてくる」と、平武監督(45)がペアに起用した。
2人が1年生だった昨年1月1日、地震が発生した。能登町は震度6強。校舎に亀裂が走り、運動公園のテニスコートは地面が傾いた。土砂崩れの恐れから寮は立ち入り禁止となった。
年越しで帰省していた岩見選手ら大勢の部員は道路寸断で学校に戻れず、1月3日の予定だった練習再開はメドが立たなくなった。
平監督が選んだ苦渋の策が「遠征」だった。各地からオンラインで授業を受け、放課後に練習を続ける――。石川県加賀市(1月20~27日)に始まり、三重県松阪市(30~2月8日)、再び加賀市(23~3月2日)、そして静岡県御殿場市(2~25日)へ。加賀と御殿場では合宿ができる施設を利用し、松阪ではライバル・三重の厚意にあずかった。2年前の総体で女子団体を制した高校で、寮で寝食を共にし、合同で練習した。宮下選手は「トップクラスの選手と手合わせができ、経験値が上がった」と振り返る。
拠点が運動公園に戻って1年4か月。寮生は学校の敷地に置かれたコンテナ型仮設寮で暮らし、周辺道路の修繕が続くなど復興は道半ばだ。それでも、岩見選手は「めまぐるしく生活環境が変わった頃に比べれば寮は新しいし、慣れれば今の方がいい」と屈託がない。
能登は被災後も全国挑戦を続けており、6月にはシングルスで岩見選手が4強、宮下選手は8強入りした。仮設住宅からテニスコートの隣道を行き来するお年寄りの避難者からは「勇気づけられているよ」「頑張れ」などと声をかけられ、背筋が伸びる思いをしている。名前は聞いていないが、言葉は胸に刻んでいる。
地震を経験した3年生にとり総体は集大成の大会だ。宮下選手は「能登が前に進んでいると結果で示したい」、岩見選手は「支えてくれた人々に恩返しをしたい」。被災地の思いを胸に、大一番に臨む。