(20日、第107回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 興国6―4大商大堺) 「終わった」。三回表に4点目を失った時、そう…
(20日、第107回全国高校野球選手権大阪大会4回戦 興国6―4大商大堺)
「終わった」。三回表に4点目を失った時、そう思ってしまった。
そんな気持ちを知るかのように、ベンチから大きな、大きな仲間の声が聞こえてくる。
「まだ終わってないぞ!」
マウンドに立つ興国の若林獅童投手(3年)は、こみあげてくる涙をこらえた。「僕が諦めたらだめだ」。いつも、この声が自分を奮い立たせてくれる。気持ちを切り替え、続く打者を三球三振に切ってとった。
若林投手は生まれつきの難聴で両耳が聞こえにくい。ベンチからの指示を聞き返すこともある。マウンドに集まる時、仲間はグラブで口元を隠さずに、大きな声で会話してくれる。
いつも自分のことを考えてくれる仲間たちとは、どんな相談もできる間柄。エースで4番打者の自分にできることは、そんな仲間たちがいるチームを勝利に導くことだ。
三回裏には内野安打で出塁し、同点のホームを踏んだ。投げては四回以降、七つの三振を奪って無失点。逆転での勝利につなげた。
試合後、仲間たちの声に救われた後は「すべての球に、気持ちを入れて投げ切ろうとの思いだった」と話した。感謝を胸に「甲子園に行く」と、まっすぐ前を見据えた。(渡辺萌々香)