<第107回全国高校野球選手権大会西東京大会:佼成学園4-3明大八王子 >◇19日◇4回戦◇府中市民球場 佼成学園には左…
<第107回全国高校野球選手権大会西東京大会:佼成学園4-3明大八王子 >◇19日◇4回戦◇府中市民球場
佼成学園には左腕の熊谷 憲祐(3年)という絶対的なエースがいる。1年の秋から主戦投手で、昨年の春は日大三に投げ勝ち、秋は帝京に敗れたものの自責点0に抑えた実績もある。佼成学園は今大会の2試合、2年生の前田 将弥を起用し、熊谷を温存して勝ち進んできた。4回戦でシード校の明大八王子と対戦することになり、佼成学園の藤田直毅監督は満を持してエースの熊谷を先発に起用した。
明大八王子は3回戦で創価に、継続試合で試合再開後の8回裏に逆転して勢いに乗っている。佼成学園戦でも3回戦の勢いそのままに、1回表明大八王子の1番・木下 夏葵外野手(3年)の中前安打を皮切りに猛攻が始まり、一気に3点を挙げる。「炎天下。プレッシャーを感じていたのでしょうか」と藤田監督は語る。
明大八王子は1年生の夏から公式戦で投げている下手投げの上原 和玖(3年)が先発した。佼成学園は2回裏一死二塁から7番・岡田 岳瑛捕手(3年)が中前適時打を放ち1点を返す。
さらに3回裏佼成学園は、1番・狩塚 光陽内野手(3年)の左前安打に3番・元山航太内野手(3年)の四球に盗塁などがあり、一死二、三塁となる。ここで2年生ながら4番の中村 慈胤内野手(2年)がレフトに3ランを放ち、佼成学園が逆転した。「打ったのは、インハイの真っ直ぐです。ホームランは、公式戦では初めてですが、練習試合を含めると、27本目になります」と語る。
中村は次の打席も、左飛に終わったものの、あわや連続弾かと思わせる打球であった。中村は藤田監督が期待する選手だ。藤田監督は、「中村はよくやってくれました。変化球にも対応し、ボールを捉えるのがうまいです。打撃だけでも、将来プロに行けるのではないかと思わせる選手です」と語る。
佼成学園は逆転したものの、熊谷の投球は安定しない。5回表二死一塁でボールが続いたところで、山﨑 弘睦投手(3年)にスイッチする。エース降板の危機だけに藤田監督は「彼しか託せない」と、3年生の山﨑をマウンドに送る。リードはわずか1点の場面での登板に、「ここでなのか」と山﨑は緊張もしたが、得点は許さない。
明大八王子も中村の3ランで上原が降板、右翼手になり、1年生の髙橋 僚が登板した。1年生の髙橋も、8回の1イニングだけ投げた宇井 蒼空(2年)も追加点を与えず、味方の反撃を待った。
明大八王子は毎回のように走者を出す。6回表明大八王子は二死一塁で打撃の調子がいい1番・木下を迎える。佼成学園は木下を申告敬遠し、2番・村田 晃毅捕手(3年)と勝負して、ピンチを乗り切る。8回表も二死二塁で木下を申告敬遠して、村田勝負でピンチを切り抜けた。試合は4-3で佼成学園が逃げ切り、5回戦進出を決めた。
試合後藤田監督は開口一番に、「木下君、村田君には申し訳ないことをしました。木下君は一番マークしていました。うちもここで勝たないと、という思いがありました。でも悔しいだろうと思います。申し訳ない」と語った。8回の場面などは、申告敬遠も当然の場面ではある。けれども相手の立場を考えると、勝つための苦しい決断だった。けれどもエース・熊谷が思わぬ早期の降板になる中、3年生の山﨑の好投と、2年生の大砲・中村の逆転3ランで1点差の試合を物にした。佼成学園は秋も春も接戦に敗れているだけに、貴重な勝利であることは確かだ。