サムライブルーは優勝したものの、なでしこジャパンは3位に終わったE-1選手権。韓国、中国、日本の3チームが勝点、得失点…

 サムライブルーは優勝したものの、なでしこジャパンは3位に終わったE-1選手権。韓国、中国、日本の3チームが勝点、得失点差で並んだ末の結果だが、なでしこはアジアにおいて、どのような位置にいるのか? なでしこの「現在地」をサッカージャーナリスト後藤健生が探る!

■なぜ「ターンオーバー」をしなかったのか

 男子日本代表の森保一監督は、E-1選手権で大胆なターンオーバー策を採用した。

 2戦目の中国戦では香港戦からスタメン11人をすべて入れ替え、優勝がかかった韓国戦では2人を除いて香港戦と同じメンバーに戻した(フィールドプレーヤーは1人を変えただけ)。この結果、“香港戦組”は中6日の準備期間が与えられ、その間にトレーニングを積んでチームとしての完成度を高めることができた。

 それに対して、女子代表のニルス・ニールセン監督は第1戦から第2戦、第2戦から第3戦に向けてチームの半数程度を入れ替える方式をとった。

 もっとも、男子の場合は参加した3チームの間に、戦力的に一定の実力差があった。日本や韓国が欧州組を招集できなかったため、中国、香港との戦力差は本来のものより小さかったが、それでも序列は明らかで、最終順位はFIFAランキング通りとなった。それに対して、女子の場合は日本が欧州組抜きだったため、上位3チームの間に実力差はほとんどなく、冒頭に述べたように接戦が続いた。

 ニールセン監督が大幅なターンオーバーをしなかった(できなかった)理由は、ここにあるのかもしれない。

■リードしていても「アグレッシブさ」追及

 ニールセン監督と森保監督を比べると、ニールセン監督はリードしている試合でもアグレッシブさを追及したり、攻撃的(素人)サイドバックを起用したり、1点が必要な最終戦では高橋はなを再びトップに上げて、4トップとも言える超攻撃的布陣に打って出たりと、非常にアグレッシブな(ギャンブル的な)采配をするのに対して、森保監督は韓国戦で猛攻を受けると、高さのある選手を次々と投入して守り切って勝点3を確保した。より慎重で、結果にこだわった采配だ。

 もちろん、代表監督に就任して半年ほどで、目標となる女子ワールドカップまで2年、オリンピックまでは3年もある女子代表と、森保監督就任からすでに7年が経過し、そして1年後にワールドカップを控えている男子代表とでは、置かれた状況に大きな違いがあった。

 従って、森保監督のチームが目指すべき方向性がはっきりと見えるのも当然のことだし(それが好きか嫌いかは別として)、一方、新監督がまだ選手をテストしてラージグループを形成しようとしている段階の女子代表で、それがまだ見えてこないことも当然のことだ。

■3連勝後の「7試合」で勝ったのは台湾戦だけ

 ただ、E-1選手権の中国戦はニールセン監督就任以来、すでに10試合目となる(その他、コロンビアとのトレーニングマッチが1試合)。ニールセン監督の采配からは、本来のそれとは違うポジションでの起用で驚かせることはあっても、まだチームが目指すべきグランド・デザインは見えてきていない。

「ボールを保持して攻守にアグレッシブなサッカー」を目指すと言うが、それではあまりにも抽象的あるいは理念的な概念だ。「アグレッシブな試合をしたい」、「自分たちでボールを動かすサッカーをしたい」というのは、おそらく世界中のすべての監督が抱いている理想だろう。

 だが、それを実行することはとても難しい。そういうサッカーをどうやって実現するかを指導者たちは競い合っているのだ。だが、そのあたりについてニールセン監督は多くを語ろうとしない。

 2月の「SheBelievesCup」では、オーストラリア、コロンビア、アメリカに3連勝と華々しいスタートを切ったものの、その後の7試合で勝利したのは格下の台湾戦だけだ。強豪ブラジル、スペインとのアウェイ戦での敗戦は仕方がないとしても、欧州組抜きとはいえ、韓国、中国にも勝利することができなかった。

 ニールセン監督は「まだテスト段階だ」と言う。その口ぶりからは、テストの期間はまだ当分は続くように思える。だが、いつまでもそれでいいとは思えない。

 そろそろ、1回くらいは本気で勝ちに行く采配を見せてほしいものである。

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