(19日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会準決勝 北海8―3駒大苫小牧) 同点に追いついた三回表、駒大苫小牧の林…

(19日、第107回全国高校野球選手権南北海道大会準決勝 北海8―3駒大苫小牧)

 同点に追いついた三回表、駒大苫小牧の林逸洋(リンイヤン)主将(3年)がベンチで声をかけると、選手たちは人さし指を高く掲げた。「チームは一つ」「めざすは頂点」という意味が込められている。佐々木孝介監督が主将として甲子園を初制覇した2004年、注目を集めたポーズだ。

 台湾出身の林主将は、このポーズに憧れ海を渡った。小学生の時、家族と旅行で札幌ドームを訪れた。当時、プロ野球日本ハムで活躍していた同郷の英雄・陽岱鋼選手を目の当たりにし、日本で野球をすることを夢見た。日本の野球について調べ、甲子園で旋風を巻き起こした駒大苫小牧やそのポーズを知り、留学したいと熱望した。

 入学当初は日本語や野球部の礼儀の厳しさに苦戦した。寮で同室だった北野佑一郎副主将(3年)が、ミーティング後に内容を説明したり、間に入ったりしてくれて、チームになじんでいった。

 次第に林主将の日本での野球にかける熱い思いが周囲に波及。昨年、佐々木監督に「林しかいない」と主将に任命された。

 林主将は、主将とは監督と部員の間に立ちチームが進むべき方向を決める立場だと考える。3年生は自分が一番という意識が強く、まとまりに欠けた。人さし指に込められた理念を伝え続け、2年ぶりに4強入り。佐々木監督は「林主将がいなければこのチームはなかった」とたたえた。

 林主将はこの日、無安打に終わり「主将としてふがいない」と涙。しかし試合後、一つになったチームで仲間たちと肩をたたき合い、「日本に来て本当によかった」と話した。(朽木誠一郎)