Jリーガーが代表メンバーの「E-1選手権」は、日本の優勝で幕を閉じた。そして、その活躍はJリーグへと興味を移行させる。…

 Jリーガーが代表メンバーの「E-1選手権」は、日本の優勝で幕を閉じた。そして、その活躍はJリーグへと興味を移行させる。例年以上の大混戦となっているJリーグの「これまで」と「今後」について、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が激論を交わす!

■危機感を持たないといけない「少なさ」

――E-1選手権に入る直前に首位交代が起こるなど、例年以上の大混戦となっています。この展開は予想していましたか。

大住「いや、こうなるとは全然、予想しなかった。特に柏レイソルが首位に立つというのは、想像もつかなかった」

後藤「開幕前のジェフユナイテッド千葉とのちばぎんカップを見て、今年の柏は良いだろうなと思ったけど、首位まで行くとは思わなかった。横浜F・マリノスは、けっこうヤバいだろうなと思っていたけどね。最近になってヴィッセル神戸が調子を上げてきたし、鹿島アントラーズもまだ行けそうなので、その辺はまあ予想通りかな」

大住「サンフレッチェ広島がもうちょっと安定しているかなと思ったのに、けっこう不安定なのが気になるよね」

後藤「そうそう。木下康介が入って、これからうまくかみ合うんじゃないかと思うけど。トルガイ・アルスランは、まだケガから戻ってこられないしね」

大住「注目点はいろいろあるけれど、とにかく今シーズン一番、気になっているのは、得点が少ないこと。これまで行われた全228試合(7月18日現在)で、生まれたゴールは合計524点。1試合平均にすると、約2.30得点なんだよね。去年の全380試合の総得点は1013で、1試合平均は2.67得点。Jリーグはこれまで、2.5台から2.6台をずっとキープしているんだけど、今季はハッキリ言って異常なまでにゴールが少ない。この1か月間くらいで随分、持ち直してきたけど、それまでは1試合平均2.2得点を切るくらいだった。夏場に来て疲れて、守備の粘りがなくなったのかは分からないけど、それでも1試合平均2.30得点というのは、危機感を持たないといけないレベルだと思うんだよね。シュートも少ないし、ゴールも少ない。言ってみれば、サッカーで一番スタンドが沸くシーンが少ないリーグという感じがして、ちょっとヤバいなと思っている」

■90分間の「激しい守備」を可能にしたが…

後藤「簡単に結論は出せないけど、ゴールが少ないのは確かだし、シュート数が少ないとは感じる。本当につまらない0-0の試合が増えているのかどうか、もう少し分析してみないとね」

大住「1試合通してつまらないということは、そう多くはないんだけど、前半はまったく何もなかったという試合がけっこう多いよね。どのチームも守備をしっかりしようという意識が勝っているのか、あるいは3バックのチームが増えたせいなのかは分からないけど、とにかく後藤さんが言うようにシュート数も少なくて、両チーム合わせて1試合平均のシュート数が18.36本なんだよね。シュートを打たなければ点は入らないんだから、点が少ないのは当たり前だと思う。守備が勝っていて攻撃があまり効果を出していないリーグと言えるんじゃないかと、僕は思っているんだけど」

後藤「試合開始直後から、これは90分間もたないんじゃないかという、アグレッシブな守備をしているよね。だけど5人交代制をうまく使うと、それを90分間続けられるということが影響しているのかもしれない。何年か5人交代制をやってきて、その結果90分間、激しい守備を保つことができるようになってきたんじゃないかな」

■組織として「攻撃の形」が完成していない

大住「5人交代制を攻撃的に使うか、そういうふうに最後まで穴をつくらないように守備的に使うかというのは、チームや監督の考え方次第だと思うけど、それが守備のほうに完全に振れている感じがするよね。1試合平均1得点に届かないチームが、たくさんあるんだからね」

後藤「で、そういう守備を何とか打開できる攻撃的な選手は皆、ヨーロッパに行っちゃうしね。守備はそれなりの選手をそろえて頑張ればものになるけど、攻撃はやはり個人能力のある選手がいないと」

大住「組織として攻撃の形がちゃんと完成していないチームも多いような感じがするんだよね。中盤まではパンパンとパスを回していくけど、最後のところでアレアレと終わる攻撃がとても多い。そういう状況だけど、後藤さんも取材した川崎フロンターレと鹿島アントラーズの試合は、わりと攻撃が活発な試合だったよね」

後藤「川崎はレアンドロ・ダミアンとかいた時代のように最後に決め切るものがないんだけど、形はつくれている」

大住「そうだね。あの試合の前半には、鹿島も活発に攻めていた。後半は川崎に支配されちゃったけど、試合を通してゴール前の攻め合いが多い試合だった。あのくらいの試合を皆がしていかないと、Jリーグは危ないんじゃないのかなと思うよ」

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