朝日新聞社と朝日放送(ABC)テレビの高校野球総合情報サイト「バーチャル高校野球(VK)」は、2015年のライブ配信開…
朝日新聞社と朝日放送(ABC)テレビの高校野球総合情報サイト「バーチャル高校野球(VK)」は、2015年のライブ配信開始から10周年を迎えた。22年からフィールドディレクターとして取材を続ける斎藤佑樹さん(37)が、節目を迎えるVKに向けてメッセージを贈った。
■高校野球の魅力、これからも発信
バーチャル高校野球(VK)がこの10年間、全国の球児たちの熱戦を多くのファンの皆さんに伝え、感動を届けてきたことに、心から敬意を表します。
僕らが泥だらけになって白球を追いかけていたグラウンドの熱気が、今や場所を選ばずに共有できる時代。VKができるまで想像すらできませんでした。本当に素晴らしい進化だと感じています。
同じような速度で、高校野球自体も変革が進んでいます。選手の健康管理、チームビルディング、部活動のあり方――。これらの課題に対してアプローチも多様化しています。2022年から始まった取材企画「斎藤佑樹『未来へのメッセージ』」では、現場を巡り、次世代によりよい野球界をつないでいくためのヒントを探ってきました。
台湾での取材が印象的でした。19年のU18ワールドカップ(W杯)で優勝し、トップチームも昨年のプレミア12で初優勝を果たした強さの根幹を知りたいと、この春に現地を訪問しました。日本との違いに驚きました。自治体からグラブやスパイクの提供があったり、練習施設を無料で使わせてもらったり。台湾屈指の強豪校・平鎮の江庭毅主将(3年)は「家の負担を少しでも減らせるのはありがたい」。球児が夢に向かって努力する環境が充実してきたことも躍進の一因だと感じました。
台湾野球を統括する中華民国野球協会の秘書長、林宗成さんの言葉が胸に残っています。「すべての球児が憧れ、出場をめざす甲子園は、台湾にとってうらやましい大会。日本は台湾の師匠。学び続けなければならない」
海外からも評価される高校野球の魅力は何なのか。これまでの取材を振り返ってみました。柳川(福岡)では、インドネシアから「甲子園に出たい」と留学してきた球児を取材しました。平日の練習時間50分間で工夫をこらして甲子園を目指す武田(広島)。SNSを武器に部員不足という課題に生徒が主体的にアプローチする我孫子(千葉)。
すべての球児から感じた「一生懸命さ」や「真剣さ」が、老若男女問わず多くの人々に愛される魅力の本質なのだと改めて気づきました。
次の10年も、その先も、高校野球は多くの人々に感動を届ける存在であり続けてほしいと願っています。VKはその重要なツールの一つです。僕も一員として、魅力を発信し続けていきます。
さいとう・ゆうき 1988年生まれ、群馬県出身。早稲田実(西東京)のエースとして夏の第88回全国高校野球選手権大会で全国制覇。早稲田大に進学し、2010年秋のプロ野球ドラフト会議で4球団競合の末、北海道日本ハムファイターズにドラフト1位で入団。21年に現役引退。同年12月に「株式会社斎藤佑樹」を設立。22年2月に学生野球資格を回復し、「野球未来づくり」をテーマに活動を続けている。同年、バーチャル高校野球のフィールドディレクターにも就任し、各地の学校を取材してきた。