(19日、第107回全国高校野球選手権静岡大会3回戦 御殿場西10―1磐田西=七回コールド) 四回裏2死二塁。磐田西の…

 (19日、第107回全国高校野球選手権静岡大会3回戦 御殿場西10―1磐田西=七回コールド)

 四回裏2死二塁。磐田西の背番号13、鈴木崚太(りょうた)選手(3年)が江塚塁吾(るいあ)主将(3年)に代わって打席に立った。

 チームはここまで5安打。御殿場西の1安打を上回ってはいたが、得点には結びつかなかった。三回に5四死球が絡んで3点を失っており、流れを引き戻したい勝負どころに打席が回ってきた。

 鈴木選手は配球を読み、外寄りの直球に絞って待った。狙い通りの球で力んだが、強いゴロが敵失を誘い、二塁走者の大隅陽斗選手(3年)が一気に生還。1点をかえし、一塁上で笑顔を見せた鈴木選手は「これからだ」と気合を入れ直した。

 磐田西は打撃、走塁などのリーダーを決め、練習内容だけでなく、試合に出る選手も選手を中心に決めている。鈴木選手は昨年、新チームで打撃リーダーに立候補した。この日も相手投手を分析し、狙い球を指示。山口遼太監督は「もっと打つ選手はいるけど、これだけは負けないという気持ちが強く、みんなも信頼している。この1点、神様はいるんだなと思った」。

 その後、引き離されたが、鈴木選手は五回終了後の休憩で、「前半は初球から振っていったが、後半は球を見極めて満塁をつくろう」と仲間に呼びかけた。この日2打席目は、点を入れなければコールド負けとなる七回裏の先頭打者。狙った直球が来たが中飛に倒れ、三者凡退。3年連続の3回戦敗退となった。

 「投手全員が出るつもりの総力戦で」と選手から提案し、4投手が継投した試合。試合後、鈴木選手は涙がなかなか止まらなかった。「みんなで選んだメンバーでやり切ったので悔いはないです」と前を向いた。(斉藤智子)