<2025年全国高等学校野球選手権埼玉大会>:山村学園5-1埼玉栄◇17日◇3回戦◇上尾市民球場 プロ注目の大型遊撃手・…

<2025年全国高等学校野球選手権埼玉大会>:山村学園5-1埼玉栄◇17日◇3回戦◇上尾市民球場

 プロ注目の大型遊撃手・横田 蒼和(3年)を擁するDシード・山村学園vs1年次から登板経験のあるエース和泉晴也(3年)擁する埼玉栄。3回戦屈指の好カードは、独特の緊張感の中、前評判通りの展開となる。

 先発は埼玉栄がその和泉、一方の山村学園は

「埼玉栄相手だと2年生では浮き足立つかと思い」(岡野監督)

何といきなりエース横田が登板し試合が始まる。

 ゲームは総じて埼玉栄ペースであった。

 横田は昨秋終了後から投球フォームが大幅に変更。これまでのオーソドックスなフォームから

「左足をグッと捻ると右足に体重が乗るようになって。やってたら花咲徳栄・上原投手に似ていることに気づいて、映像など参考にするようになった」(横田)

と、反動を使い左足を巻き込むようなフォームに変更し、直球の威力は最速140kmまで増した。

 先制したのは山村学園。
 3回裏、1死から1番・磯心翔(3年)が右越えの三塁打を放ちチャンスメイクすると、2死後、横田のレフトフライをレフトが落球。ラッキーな形で山村学園が先制する。

 そして投手陣。予想通りエース横田は2イニング。マシンガン継投で有名な山村学園は、3回からは184cm97kg、最速142kmの2年生左腕・亀田優次郎が登板する。だが、2イニング目の4回表、2四球を与えピンチを招くと、1年生の川口丈に右前適時打を浴び同点とされる。

 4回からは3番手として昨秋からの登板経験も豊富な最速142kmの2年生右腕・菊村崇 が登板。ピンチを招くも無失点で切り抜ける。

 一方、打線はその後、埼玉栄・和泉の前に対し、毎回のように犠打で得点圏へ進めるが、一本が出ない。

 流れを掴めない山村学園ベンチは、マシンガン継投を諦め

「横田完投も考えたが、今後のことを考えてマシンガンに切り替えた。でも、やっぱり2年生ではこの雰囲気で荷が重かった」(岡野監督)

と、攻撃へ流れを持ってくるべく何とエース横田が6回から再度スクランブル登板に入る。

 7回表には2四球と失策で二死満塁とこの日最大のピンチを迎える。だが、長岡琉太(3年)の三遊間への打球をショート磯が飛びついてアウトにする。この日の山村学園は守備陣が素晴らしく他にも埼玉栄の主砲・津郷那智(3年)の大飛球を2つ好捕している。

 こうなると、流れは山村学園へ。

 7回に100球を迎え、徐々に抑えが効かなくなった埼玉栄・和泉に対し、8回裏、1死から畠山明祈(2年)の右前打と、続く田辺輝心翔(2年)の四球で一死一、二塁とする。ここで岡野監督が「宇宙人」と評する途中出場の1年生、浦和シニア出身で190cm92kgの松本智司が初球を捉えレフト線へ値千金となる適時2塁打を放つ。この場面松本は公式戦初打席のファーストスイング。

「外の変化球。様子見で投げたんですが」(和泉)

「緊張はありませんでした。ピンチでも楽しんでできた。外角に来るのはわかっていたんで、直球でも変化球でも打ってやろうと。チームが勝ててよかった」

と、松本は感慨深げ。というのも、開幕式前日に内蔵系器官が炎症を起こし5日間入院して3日前に復帰。この状況で結果を出せるあたり並みの選手ではない。

 これで再度勢いを得た山村学園打線は、埼玉栄の2番手・齋藤大治(2年)に対し、宮本恵介(3年)と同じく途中出場の1年生・川瀬奏太が適時打を放つなど、この回一挙4点を奪い試合を決めた。

 投げては横田が6回から最後まで投げ抜く。

 結局、山村学園が5対1で埼玉栄に勝利し4回戦進出を決めた。

 山村学園は肝を冷やしたであろう。岡野監督も

「こうなると思っていた。心の準備ができていただけ耐えられました」

と、ホッとした表情を浮かべた。

「和泉は気持ちが強い投手なので困った時に逃げない。和泉くんを降ろしたら勝ちだからベルトより低い直球、変化球を絞って、低い打球で。前半はジャブを打って後半勝負。松本は大会前から5番を打たせていたが緊急入院して、戻ってきたばかり。(ファーストの小谷野が足を攣り途中交代)で、行けって言ったらニコニコしていて実際に打って凄いなあと」(岡野監督)

と、和泉の好投を讃えつつ、「宇宙人」の活躍に驚きを隠せなかった。あとはこの日好投も無安打の横田の打撃待ちか。このままでは終われないであろう。

「調子は悪くないんですが、コンタクト率が上がらない。次は打撃でも貢献したい」と、横田も活躍を誓う。「宇宙人」と大黒柱の活躍に今後も注目だ。