サムライブルーは優勝したものの、なでしこジャパンは3位に終わったE-1選手権。韓国、中国、日本の3チームが勝点、得失点…

 サムライブルーは優勝したものの、なでしこジャパンは3位に終わったE-1選手権。韓国、中国、日本の3チームが勝点、得失点差で並んだ末の結果だが、なでしこはアジアにおいて、どのような位置にいるのか? なでしこの「現在地」をサッカージャーナリスト後藤健生が探る!

■あと数分「守り切れなかった」日本

 女子日本代表(なでしこジャパン)は韓国で開かれていたE-1選手権で3位に終わった。

 女子の大会は日本、韓国、中国の上位3チームの対戦がすべて引き分けに終わり、台湾(中国台北)に勝利して勝点5で3チームが並び、当該国内の対戦成績でも勝点、得失点が同じなので、3チーム間の対戦での総得点数の差で1位が韓国、2位が中国、3位が日本という順位となった。

 文字通り、接戦の連続だった。

 韓国は、初戦の中国戦では後半追加タイムの90+4分に同点ゴールを決めて2対2の引き分けに持ち込み、続く日本戦でも終了間際の86分に同点ゴールを決めている(1対1)。

 つまり、中国や日本は韓国戦であと数分守り切って勝利していれば、優勝に手が届いたということになる。

■「エキサイティングな試合」だったが…

 日本は2戦目で韓国と対戦した。そして、やや優勢の前半37分にスローインから抜け出した成宮唯が先制ゴールを決めて後半に入った。だが、後半に入ると1点を追う韓国が攻勢を強め、GKの大熊茜を含む守備陣がなんとかリードを守って試合終盤を迎えた。そして、韓国が同点とした後の数分間は激しい攻め合いで非常にエキサイティングな試合となった。

 ニルス・ニールセン監督は試合後の会見冒頭で「非常に興味深い良いゲームだった」と振り返った。たしかに、1点をリードした日本が常に攻撃の意識を持って戦った結果、観客にとっては非常に優れたエンターテインメントとなった。

 だが、「星勘定」を考えれば、せっかく1点をリードしていたのだから、もう少し守備意識を高めて相手が強引に攻めてきたらカウンターを狙うといった戦い方もできたはずだ(実際、この試合の同点ゴールが、日本がタイトルを逃がす原因となった)。

 ニールセン監督は言う。

「たしかに、そういう考え方もある。大きな大会だったらそういう(守備的な)選択をするかもしれない。だが、今はチームを作っているところ。アグレッシブな姿勢を身に着けさせたいのだ」と。

■塩越柚歩と「2トップ」を組んだのは…

「攻守にアグレッシブなサッカー」。ニールセン監督の掲げるモットーである。

 初戦の台湾戦では、本来はアタッカーである矢形海優を左サイドバックに起用。矢形は期待に応えて攻撃的なプレーを見せただけでなく、先制ゴールを決める活躍で注目を集めた。

 ニールセン監督は、続く韓国戦でも右サイドバックに山本柚月、左に浜田芽来と、ともにFW登録の選手を起用した。だが、SBが本職ではない浜田は韓国のカン・チェリムの仕掛けに対して苦戦を強いられることになった。

 やはり、強い相手になると“素人SB”では守備面での“ほころび”が出やすくなるのだろう。

 しかし、ニールセン監督は本来のポジションではない位置で選手を起用することが好きなようだ。最後の中国戦でも、山本は右SBのポジションでフル出場した。

 また、DF登録の高橋はなは初戦の台湾戦ではトップで起用され、韓国戦、中国戦では本職のセンターバックで起用されたが、優勝するためにどうしても1ゴールが必要な中国戦の終盤には、高橋は前線に上がって塩越柚歩と2トップを組んだ。

 高橋のFW起用は当時、浦和レッズレディースの監督だった楠瀬直木監督の発案だが、ニールセン監督はコロンビアとの親善試合でも高橋をトップで起用している。

 いずれにしてもニールセン監督は、選手を本来のポジションと異なった位置で起用することが好きなようである。そして、「サイドバックにはオフェンシブな選手を使いたい」と言う。

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