東アジアのサッカー最強国を決めるE-1選手権が行われ、日本代表が2大会連続3度目の優勝を飾った。Jリーガーが中心の、従…
東アジアのサッカー最強国を決めるE-1選手権が行われ、日本代表が2大会連続3度目の優勝を飾った。Jリーガーが中心の、従来の日本代表とは違うチーム編成だったが、海外組とともに乗り込むであろう9月のアメリカ遠征に向けて、いくつかの収穫があったという。では、さらなる「実りの秋」を迎えるために、日本代表は今後、どうすればいいのか? サッカージャーナリストの大住良之と後藤健生が大会で得た「収穫」を踏まえつつ、来年6月の北中米ワールドカップ優勝に向けた「課題」を含め、徹底的に語り合った!
■「細かいことは苦手」なはずが…
――対戦した3チームはそれぞれ力量が違いましたが、大会3試合を通じて印象に残った選手はいますか。
後藤「そりゃあ、得点王になったジャーメイン良だよね。韓国戦のゴールを見ても、あんなシュートを決めるなんて、すごい選手だと思ったよ」
大住「アーリング・ハーランドみたいな雰囲気があったよね」
後藤「香港戦での4ゴールはたまたまかと思ったら、2試合連続(中国戦は出場なし)で、あんなゴールも決めちゃうんだから。これでジャーメインが覚醒したら、サンフレッチェ広島が今季のJ1で優勝候補筆頭に躍り出るかもしれないよ(今季これまで25試合4得点)。来年のワールドカップ本大会のメンバー入りも可能かもしれない。Jリーグの試合でも、あの得点力を見せ続けられるかな。いろいろな意味で、すごく興味があるなあ」
大住「スピードとか突進力はあったけど、僕の中では細かいことは苦手な選手という印象だったんだよね。でも今回見たら、非常によく周りが見えているし、パスも正確。そういうものは、今季移籍した広島でのトレーニングの成果なのかねえ」
後藤「広島では、そっちのほうを一生懸命やりすぎて、点が取れていなかったのかな(笑)」
■「負けていなかった」ヘディング
大住「そうかもしれないね。僕が印象に残った選手を挙げるなら、安藤智哉だな。彼のプレーには驚かされたね。香港戦も悪くなかったと思ったけど、韓国戦の出来は本当に素晴らしかった。守備は安定しているし、何しろ最後まで全然、疲れた様子を見せずにやっていたもんね」
後藤「すごく淡々というか、飄々とプレーしていて、相手に当たられても平気な顔をしているし」
大住「ヘディングは強いし、それからパスも慌てて出さないで、相手を引きつけたり、いなしてから出すことも、ちゃんとできる。もしかしたら本当に来年のワールドカップに行く選手になるかもしれない。ケガだとか、いろいろな選手に状況の変化が起こりうるわけだけど、安藤だったら今の日本代表のトップの選手たちの中に入れても、十分にできるんじゃないかな、という気がした」
後藤「大住さんの評価は、すごく極端だからなあ」
大住「守備陣では荒木隼人もすごく良かったと思う」
後藤「荒木はあれくらいできると思っていたけど、安藤がここまでできることには驚いたけど。少なくとも韓国戦の前半は、3バックの全員がヘディングで負けていなかった」
大住「そうだよね」
後藤「ただ、安藤はナ・サンホにスピードで仕掛けられると苦しかったけど」
大住「ちょっとスピードが不安かもしれないね」
■能力は高いが「最後のところが雑」
後藤「逆にナ・サンホは、こんなに足が速かったのかと驚いた。途中から、ウィングバックの望月ヘンリー海輝のほうが一生懸命守りに回っていたね」
大住「望月は良くなったね」
後藤「ああいう背の高いサイドバックは、韓国戦のように最後にヘディングを狙ってくる相手には有効だよね」
大住「そうだよね。酒井宏樹以来となる大きなサイドバックが、ようやく出てきたよね」
後藤「来年に間に合うかは分からないけど、将来、伸びるかもしれない」
大住「突破まではいいんだよね」
後藤「今年で24歳だから、何年後とか言っていられないかな」
――実際、本大会行きのチャンスはありそうですか。
後藤「まだちょっと…。良い面もあるけど、守備面ではもろいかな。急成長したら分からないけど、今の段階では厳しいと思う」
大住「能力は高いと思うんだけど、もっとサッカーを覚えないといけないよね。パリ・サンジェルマンのアクラフ・ハキミのような選手になれる資質はあると思うんだよ。テクニックもないわけじゃないし。だけど、最後のところでプレーが雑だよ」
後藤「今の日本代表にたくさんいるサイドバック候補の中で、フィジカル能力が高いのは間違いない。足も速いし。でも、うまさや賢さでは、まだ上の選手がいる」
大住「あのスピードと高さというのは、ひとつ大きな魅力だよ」
後藤「何かあったときのために、メンバーに入っていたら、いいかもしれないという選手だね」