(18日、第107回全国高校野球選手権神奈川大会4回戦 桐光学園5―1武相) 1点を追う八回裏1死一、三塁。武相の4番…

 (18日、第107回全国高校野球選手権神奈川大会4回戦 桐光学園5―1武相)

 1点を追う八回裏1死一、三塁。武相の4番、森山惇(3年)に打順が回った。「八木(隼俊)がよく投げてくれていた。せめて追いつかないと」。内角低めの直球を右翼へ運び、犠牲フライで追いついた。

 拳を振り下ろして「よし」と叫んだ。「ヒットでつなぎたかったけど、最低限の仕事はできた」

 昨秋、父の直(ただし)さんをがんで亡くした。49歳だった。

 野球経験者の父は、森山が小学生で野球を始めてから高校で寮に入るまで、ずっと練習に付き合ってくれた。

 朝は一緒に走り込み、仕事が終わると素振りを見る日々。スタンドで応援した母の貴子さん(49)は、「近所の人からは(野球漫画の)『巨人の星』の星一徹みたいと言われていました」と振り返る。

 父との別れの悲しみも、森山は「野球をやっているときは忘れられた」。チームメートも普段通り接してくれた。

 古豪の4番として迎えた最後の夏。「力を貸してほしい」と、自分のバッグには父と2人で並ぶ小学生時代の写真を入れていた。

 この日、チームは延長十回タイブレークの末、強豪の桐光学園に敗れた。豊田圭史監督は「難しい球を犠牲フライにした。大したもんだ」とねぎらった。森山は試合後、言葉を詰まらせながら「最高の結果にはならなかったけど、お父さんに良い姿を見せられたかな」と語った。(中嶋周平)