マリナーズなど4球団を米球界で渡り歩いた藤浪。(C)Getty Images 去就が注目された剛腕が求めたのは“ハマの叡…

マリナーズなど4球団を米球界で渡り歩いた藤浪。(C)Getty Images

 去就が注目された剛腕が求めたのは“ハマの叡智”だった。7月16日、DeNAはマリナーズ傘下3Aタコマを自由契約となった藤浪晋太郎の獲得を発表した。

 DeNAが元阪神のスターを求めた理由は明確だ。今季のチームは、トレバー・バウアーが開幕から防御率4.17と不振を極め、東克樹、アンドレ・ジャクソン、アンソニー・ケイに次いで先発ローテーションの柱となる投手の一本化に苦心。さらに今月12日に守護神だった入江大生が「右上腕神経障害」のため登録を抹消し、中継ぎ陣も駒不足が否めなかった。

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 チーム防御率も2.86と芳しくないDeNA。現有戦力を活かす意味でも、メジャーで日本人投手最速となる102.6マイル(約165.1キロ)も投げ込んだ藤浪は、貴重な戦力になり得ると踏んだのだろう。

 もっとも、日本人では屈指のパワーアームである藤浪が、かつての輝きを取り戻せるかは、やはり不安が付きまとう。

 剛腕としての才覚は今も健在だ。190センチを超える高身長から繰り出される160キロ超のフォーシームに加え、カットボール、スライダー、フォークと多彩な変化球も持つ藤浪は、今季のマイナーでの奪三振率は驚きの11.57。被打率も.174で、相手を牛耳る力は証明している。

 一方で、渡米前の阪神時代から露呈してきた制球難もまた抱え続けている。気になるのは、12.54という高すぎる与四球率に加え、「-2.1%」を叩き出している「K-BB%」という指標だ。

 この指標は文字通り奪三振率から与四球率を引いた値を示しているのだが、投手が自力でどれだけ有効な投球をしているかを測る目安ともなる。それがマイナスとなっているのは、藤浪のパフォーマンスが継続性に欠けることを物語ってもいる。

 実際、米メディアでも藤浪の制球力の不安定さには“落第点”が押されている。かつて所属したメッツの専門サイト『Rising Apple』は「マリナーズもフジナミの制球力の問題が耐え難いと判断したのは間違いない」と糾弾。その上で「フジナミは、たった一つの弱点(彼の場合、四球)がキャリアを損なわせる典型的な例だ」と断じている。

 無論、長く苦心している制球力が課題であることは本人も自覚している。だからこそ、豊富なデータと最新機器を揃える施設「DOCK」を持つDeNAを、米球界で「唯一」とされた弱点を改善させられる可能性を秘めた活躍の場に選んだのではないだろうか。

 ある程度のコントロールが身に付けば、モンスター級の投球を披露する――。そんなロマンを観る者に抱かせる藤浪が、ハマスタでどのような投球を見せるかは興味深いところである。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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