ホーナー氏を解雇し、激震を走らせたレッドブルの決断。その余波が業界内で広まっている(C)Getty Images F1の…

ホーナー氏を解雇し、激震を走らせたレッドブルの決断。その余波が業界内で広まっている(C)Getty Images

 F1の名門が下した人事を巡る一大決定は、小さくない衝撃を生んだ。現地時間7月9日、レッドブルはクリスチャン・ホーナー代表を解任。姉妹チームのレーシングブルズで代表を務めていたローラン・メキース氏を後任としたのだ。

 不振から脱するための“トリガー”となったのは、名物指導者のクビ切りだった。

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 今季のレッドブルは、コンストラクターズランキングでトップのマクラーレンから288ポイント差の4位と大きく後退。今後に向けても改善の兆しが見えない状況に陥っていた。

 無論、2005年から陣頭指揮を執ってきたホーナー氏の実績に疑いの余地はない。約20年に及ぶキャリアで406戦を積み重ね、優勝は実に124回。コンストラクターズチャンピオンシップ制覇6回、ドライバーチャンピオンシップ制覇8回という輝かしい成績は唯一無二とも言える。

 そんな大物のシーズン半ばでの解雇劇は、F1業界でも驚きを呼び、識者の間で疑問も生んだ。かつてルノーに所属した元F1ドライバーのジョリオン・パーマー氏は、米ポッドキャスト番組『F1 Nation』において「このタイミングでの解雇は驚きしかなかった」と言及。ホーナー氏ほどの大物がシーズン途中にクビを切られるという決定に異論を唱えている。

「近年のレッドブルは多くの実力派スタッフもチームを去っている。そして今年は状況がさらに悪化していた。その中でクリスチャンは間違いなくプレッシャーにさらされていたと思う。だから、あの突然の発表は、誰にとっても予想外だったし、効果があるかどうかは分からない」

 また、90年代にF1で活躍したマーティン・ブランドル氏も、英衛星放送『Sky Sports』の番組内で、ホーナー氏の解雇について「チームを傷つける決断になった」と指摘。その上で、レッドブルが抱える課題が「エース重視のチーム体制にある」と論じている。

「レッドブルには、デビッド・クルサード、マーク・ウェバー、セバスチャン・ベッテル、ダニエル・リカルドといった素晴らしいドライバーが揃っていた。一方で、アレックス・アルボンやカルロス・ガスリーのように、エースであるマックス(・フェルスタッペン)が信じられないほど速いため、事故を起こしてしまった若手も見てきた。私が思うに、クリスチャンが抱えていた問題は、チームのすべてをマックスに集中させなければならなかった点だ」

 21年から4連覇を果たすなど圧倒的な才覚を誇っているフェルスタッペン。そんな絶対的エースを何よりも尊重しなければならなかった立場が、ホーナー氏を苦しめたとするブランドル氏は、こうも続けている。

「とにかく奇妙だよ。こんなタイミングで彼を解雇するのはおかしいし、急ぐ必要性も不思議でしかない。私はそう言わざるを得ない。閉ざされたドアの向こうで何が起こったかは分からないが、フェルスタッペン側が、ホーナーに対して不満を抱えていたのは間違いないだろうね」

 一部で角田裕毅を評価していなかったとも伝えられるホーナー氏。そんなレジェンド指揮官の電撃更迭は、名門レッドブルにいかなる変革を起こすのか。現地時間7月25日から始まるベルギーGPは、一大決心の成否が問われるレースとなりそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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