(17日、第107回全国高校野球選手権青森大会3回戦 弘前学院聖愛8―0青森南=7回コールド) 青森南の松下和広投手(…

 (17日、第107回全国高校野球選手権青森大会3回戦 弘前学院聖愛8―0青森南=7回コールド)

 青森南の松下和広投手(3年)の速球がうなりを上げたのは、五回2死の場面だった。自己最速タイとなる142キロの直球で、2番打者から空振り三振を奪った。「絶対抑えようと思って、自信のある球を投げた」

 188センチ、93キロで県内屈指の球速を持つ右腕。フィジカルの弱さを自覚し、昨秋から週5日でジムへ。冬は雪の中でも1時間かけて歩いて通った。動画サイトを見たり、本を読んだりして、いかに自分のパワーを球に伝えるかも研究した。春になり、130キロ中盤だった球速は140キロを超えるようになった。

 この日は、弘前学院聖愛打線に内角の直球を中心に投げ込んだ。相手は昨夏準優勝の強豪。実は怖かったが、だからこそ攻めの投球を続けた。

 五回までは5奪三振、2失点。終盤まで2点差なら「勝てる」と思ったが、六回に制球が乱れ、マウンドを降りた。

 3年生6人で過ごした高校野球は「特別な時間」だった。みんなで作り上げた野球は「五回までは出し切れた」と思う。だから負けても涙はなかった。「多分、そのうち泣いちゃいますけどね」。持てる力を出し切った表情は、晴れやかだった。(小田邦彦)