(17日、第107回全国高校野球選手権神奈川大会3回戦、横浜清陵8―7藤沢清流=延長十回タイブレーク) 激戦を制した横浜…

(17日、第107回全国高校野球選手権神奈川大会3回戦、横浜清陵8―7藤沢清流=延長十回タイブレーク)

 激戦を制した横浜清陵の野原慎太郎監督は、相手をたたえ、感謝した。「チームとしてやることを徹底されていた。素晴らしい相手に、選手たちの力が引き出された」

 今春の選抜大会に21世紀枠で出場した横浜清陵と、2022年夏の神奈川大会で公立で唯一8強入りした藤沢清流。

 県立校同士による試合は熱気を帯びた。

 横浜清陵は最大5点のリードを許したが、内野安打を絡めた泥臭い攻撃などで七回に同点に。延長十回表の無死一、二塁を無失点にしのいだ裏の攻撃で、暴投の間にサヨナラの本塁を陥れた。

 八回から救援して3回無失点に抑えたエース小原悠人は言う。

 「春が終わってからずっと、もう一度甲子園の舞台に立って勝ちたいと思ってやってきた」

 横浜清陵は今年、一つの壁を破った。

 神奈川の公立の甲子園大会出場は、1997年春の選抜に出場した横浜市立横浜商以来、28年ぶりのことだった。夏の神奈川大会は90年夏の横浜商を最後に、私立が優勝を独占し続けている。

 横浜や東海大相模を筆頭にプロ志望の有力選手が全国から集まる私立の強豪に、主に地元の選手たちで戦う公立校が勝つのは、それだけ難しいことだ。

 「公立、私立というのを言い訳にしない」

 横浜清陵は、東海大相模出身の野原監督の指導のもと、そんな意識を浸透させてきた。私立だから勝つのではなく、良い野球をしている方が勝つ――。打順や継投のタイミングを選手が考案する自主性を重んじたチーム作りで、昨秋は県8強入りした。高校で野球を引退する選手がほとんどの中、知恵と工夫で力をつけてきた。

 一方の藤沢清流は、22年夏の8強入りに憧れた選手たちが集まった。榎本正樹監督は、横浜清陵に甲子園初出場で先を越されたことに刺激を受け、「応援しているけれど悔しかった。負けないぞ、という思い」を募らせてきたという。

 県内では、今春の県大会で進学校の川和が創部63年の歴史で初の8強入りを果たすなど、公立の躍進は目立っている。

 激戦区と呼ばれる神奈川での「言い訳をしない」挑戦は、それだけで価値がある。=藤沢八部(大宮慎次朗)