高校野球界に貢献した指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、愛知県内から吉田広美さん(72)が…

 高校野球界に貢献した指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、愛知県内から吉田広美さん(72)が選ばれた。母校の犬山高など尾張地区の3校で計31年間、監督や部長を務めたほか、県高野連の常務理事として尽力した功績が評価された。

 犬山市出身で、犬山高時代は陸上部。教員生活5年目の1983年、小牧高でいきなり野球部の監督を任された。

 はじめはノックもうまく打てず、夜はマメだらけになった手が痛んで眠れなかった。それでも、選手たちが日ごとに成長する姿に心を打たれた。

 「一生懸命やっているこの子たちに応えてやらんと」。強豪にはなかなか勝てなかったが、どんな選手でも最後の夏には輝くと信じ、折れずにやり抜くことの大切さを説き続けた31年間だった。

 県高野連では尾張地区の役員として、小牧市民球場(小牧市)を県内トップクラスの球場に育て上げた。

 同球場は88年に完成。吉田さんは県高野連側の窓口として、夏の愛知大会を誘致したいという市と話し合いを重ね、実現に貢献した。初代球場主任になると、グラウンド環境の良い球場をできるだけ多くの試合で使ってもらえるよう働きかけた。球場は県内の高校野球関係者の間で「内野の手入れは県下一」と評判になっていった。

 現在では夏の愛知大会で準々決勝の開催地を任されるまでになり、かつて夏は遠征続きだった尾張地区の学校にとって本拠地のような存在になっている。

 2017年に行われた招待試合では、早稲田実業高(東京)の清宮幸太郎(現・日本ハム)が高校通算100号の本塁打を放ち、全国的にも注目を浴びた。

 17年に県高野連の役員を退くまで、球児のために土日も奔走した。頑固で少し短気、でも情に厚い人柄で、愛知の高校野球界では今でも「よっさん」と親しまれている。

 「高校野球のおかげで多くの人とめぐりあえた。甲子園をめざして3年間やり抜くという良さは、いつまでも変わらず続いてほしい」(松本敏博)