(16日、第107回全国高校野球選手権和歌山大会 智弁和歌山10―0有田中央・貴志川・和歌山南陵) 試合開始直後からア…
(16日、第107回全国高校野球選手権和歌山大会 智弁和歌山10―0有田中央・貴志川・和歌山南陵)
試合開始直後からアクセル全開だった。
智弁和歌山の初戦を任されたエース渡辺颯人(3年)は一回、いきなり自己最速にあと1キロと迫る146キロを計測した。
「負けたら終わり。全てが本当に勝負。もう初戦から、1球目からガッと」
その直球で、一回に3者連続三振を奪ってリズムに乗った。4回を投げてゴロとライナーのアウトは一つずつ。残りはフライと三振だ。球威のある直球で、相手にボールの下を振らせた。
身長180センチ、体重90キロ。準優勝した選抜大会の後、こつこつと筋力トレーニングを重ねた。太ももはまるで丸太のようだ。直球の平均球速は2~3キロ上がった。
中谷仁監督は「やってきたことを確実に結果で出してくれるのが、うちのエース。日頃からの彼の取り組みを見ていたから、信頼しています」と目を細める。
2年前、チームは和歌山大会2回戦で敗れ、22年ぶりの初戦敗退を喫した。渡辺ら当時の1年生は4人がメンバー入りしていた。彼らが主力となった昨夏は甲子園に出場こそしたが、初戦の2回戦で敗退した。
「悔しさから始まった学年。一試合一試合にかける思いは、こちらが言わなくてもわかっている」と中谷監督。
その言葉通り、打線は初戦の硬さを感じさせず、序盤からつながって五回コールドで試合を決めた。
渡辺は「今まで新チームになってから積み上げてきたものを、より意識を高く持ってやってきた」と胸を張る。
昨秋の近畿大会、今春の選抜大会、そして近畿大会といずれも準優勝だった。投打ともに充実して迎えた最後のチャンス。頂点しか見えていない。=紀三井寺(室田賢)