来年3月、イタリアで開かれるミラノ・コルティナ冬季パラリンピック出場を目指すパラアイスホッケー日本代表チームが、資金難…

 来年3月、イタリアで開かれるミラノ・コルティナ冬季パラリンピック出場を目指すパラアイスホッケー日本代表チームが、資金難のため苦しんでいる。9月にカザフスタンで開かれる世界選手権への遠征費用を強化費などではまかないきれず、やむなくクラウドファンディングで資金を集め始めた。世界選手権は、パラリンピック出場には必須の大会。ここで上位に入り、11月にノルウェーで開催される世界最終予選に進まなければ道は閉ざされる。競技の普及・振興・強化を担う日本パラアイスホッケー協会は「選手たちの夢を、経済的な理由であきらめさせたくない」と、支援をよびかけている。

 「ミライへ続く氷上の挑戦を応援!」と題したクラウドファンディングは7月1日に始まった。目標金額は1200万円。世界選手権への選手・スタッフなどの渡航費、宿泊費、用具運送代金は1人平均75万円、チーム全体で約1800万円かかるという。支援が十分に集まらない場合は、選手たちが自己負担して渡航する予定だ。この競技の魅力を伝えるため、代表選手たちがSNSを通じて、競技の魅力や支援をよびかけるメッセージを送る取り組みも同時に始めた。

 パラリンピックに出場できるのは世界で8カ国のみ。日本チームは現在、世界ランク9位から14位のBプールに属しており、世界選手権のBプールで上位に入り、まずは世界最終予選に出場する権利を得る必要がある。パラリンピック開催国イタリアが開催国枠で出場権があるため、最終予選ではAプールの下位チームと残り2枠の出場権を争うことになる。

 資金難は、思うように成績を上げられないことが原因だ。強化費は日本パラリンピック委員会(JPC)から各競技団体に配分されるが、配分額はパラリンピックなどでの成績によって決定される。

 パラアイスホッケーチームは1998年の長野パラリンピックから4大会連続出場し2010年のバンクーバー大会では銀メダルを獲得したが、その後は出場権を逃すなど成績が低迷。スポーツ庁が重点支援の対象とする「ミラノ・コルティナ重点支援競技」にも選ばれていない。資金難などから、国際試合などに出ることが難しく、経験を積むことができない状態が続く。月2回ある強化合宿の参加費も、一部を除き選手の個人負担という状況だ。今回のクラウドファンディングを中心となって進める日本パラアイスホッケー協会理事の須藤悟さん(54)は「資金がなくて国際経験が積めずに成績も上がらない。負のスパイラルに陥っている」という。

 だが、チームには希望の光もある。近年は育成枠から上がってきた選手も多く、現在のチームでは10代の選手が主力として活躍する。23年の世界選手権Bプールで日本人として初めてMVPに輝いた伊藤樹選手(19)は、高校卒業後、奨学金を得てアメリカに留学。現地のクラブチームに入って技術を磨くなど、世界を視野に活躍している。

 ベテランも健在だ。須藤さん自身、02年のソルトレーク大会から3大会連続出場し、現在も現役の代表選手として活躍しているアスリートで、長年選手としてチームを支えている。

 須藤さんは「今、私たちが頑張らないと、競技自体が日本から無くなってしまうという危機感がある。これから競技に取り組みたいという人たち、パラアイスホッケーを見ていて面白いと感じてくれる人たちのためにも世の中にアピールしてゆきたい」と話す。

 クラウドファンディングのサイトは(https://readyfor.jp/projects/japan_parahockey)。1万円からのコースがあり、出場選手とスタッフのサイン入りユニホームがプレゼントされる100万円のコースもある。締め切りは8月31日。(吉田耕一郎)