◇女子メジャー第4戦◇アムンディ エビアン選手権 最終日(13日)◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6504yd(パ…
◇女子メジャー第4戦◇アムンディ エビアン選手権 最終日(13日)◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6504yd(パー71)
プレーオフ18番(パー5)の2ホール目、ピン右3mの絶好機につける2オンに成功したグレース・キム(オーストラリア)は1年前の記憶をたどった。「アヤカも同じようなラインを決めていたよね?」。古江彩佳が18番の劇的なイーグルでメジャー初優勝を遂げた2024年大会最終日。左から7yd、手前から17ydというピン位置はこの日と全く同じだった。今週何度も対峙した、左右に曲がるスネークラインをシンプルに打ち切ってビッグタイトルをつかんだ。
週初めに風邪をひき、必ずしも万全なコンディションではなかったという今大会。「たとえ80%だとしても、その80%でできる100%を出そう」と弱気は見せなかった。12番でダブルボギーを喫しても、「もう失うものはない」と開き直って上がり4ホールで4つ伸ばした。
下部ツアーから昇格1年目の2023年「ロッテ選手権」で初優勝を飾って以降は勝利がなく、自分自身に対する疑念が膨らんでいく日々に心がすり減った。「今年の初めはたくさんの迷いがあって、ちょっとした燃え尽き症候群のような状態だったと思う」。チームの支えでそれを乗り越えられたと自覚しているからこそ、たくましかった。
強い気持ちが奇跡を起こした。同組のジーノ・ティティクル(タイ)に2打ビハインドで迎えた最終18番(パー5)、奥の傾斜を使ってピンそば数十センチに寄せるスーパーショットで2オンに成功。値千金のイーグルでプレーオフに持ち込むと、再びの18番となった1ホール目はセカンドを右手前のクリーク(小川)に打ち込んで絶体絶命の大ピンチになった。
小川手前のラフにドロップしたボールのライは決して悪くなかった。「いいチップショットになりそうな予感はしていた。もう1回できるかは分からないけどね」と笑う。58度のウェッジできれいに拾ったボールが、そのままカップに吸い込まれるミラクルチップイン。ティティクルもバーディを奪い返して2ホール目にもつれたが、会場のムードは一変していた。
2ホール目のセカンドは直前の2ホールと同じ4UT。勝負を決めるチャンスを演出し、「しばらくはバッグにそのまま入れておくと思う」とお気に入りのクラブになった。3週前の「KPMG全米女子プロ選手権」では母国の仲間にお祝いでシャンパンをかける側だった自分が、今度はそのミンジー・リー(オーストラリア)からお返しされた。「信じられない。ただただ、感激しています」。ドラマチックな幕切れの余韻に浸った。(フランス・エビアン/亀山泰宏)