(14日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会1回戦 帯広大谷6―3帯広北) 照りつける日差し、むっとする空気。それ…
(14日、第107回全国高校野球選手権北北海道大会1回戦 帯広大谷6―3帯広北)
照りつける日差し、むっとする空気。それでも九回、帯広北の吉田弦生投手(3年)は、時折、笑顔を見せた。「裏にみんなが点をとってくれる」。最後の打者を内野フライに打ちとると、表情一つ変えず、ベンチに向かった。
この日は六回、死球と連続内野安打で招いた満塁のピンチに、甘く浮いた球を左翼方向に運ばれ勝ち越しを許した。4失点を喫したが、その後は集中力を切らすこと無く、コーナーを丁寧に突き、追加点を許さなかった。
吉田投手には悔しい思いをした試合がある。春の地区大会初戦の帯広柏葉戦だ。7点差をひっくり返され、13―14で逆転サヨナラ負けした。先発した吉田投手は六回途中で降板。体力不足を痛感した。
それ以来、スタミナ切れしないよう、斎藤監督の主導のもと、チーム全体で取り組んでいる「補食」に力を入れた。練習中や練習の前後、こまめにバナナやゆで卵を食べるのだ。今夏も地区大会の10日前から補食を徹底。大きく体重を落とすことなく大会を迎えた。この日も試合前にバナナを2本食べ、試合中はゼリーなどをとりながらスタミナ維持に努めた。
試合後、吉田投手に涙はなかった。「(4失点した)六回は気持ちが高ぶり、冷静さを保てなかった。悔しさはあるけど、体力的には最後まで全力で出来た。楽しんで投げられました」
この夏、3試合計376球を1人で投げきった。「バナナはしばらく食べたくありません。食べ過ぎたので」と、笑った。(中沢滋人)