骨太のチーム作りが話題を集める藤川監督(C)産経新聞社 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲ…

骨太のチーム作りが話題を集める藤川監督(C)産経新聞社

 野球評論家の佐野慈紀氏が現在の野球界を独自の視点で考察する「シゲキ的球論」。今回は強すぎる阪神について語った。

 阪神が独走状態だ。7月13日のヤクルト戦(甲子園)に2-1と勝利。

【画像】近鉄で中継ぎとして活躍した佐野慈紀氏

 主砲・佐藤輝明は0-0で迎えた6回無死二塁、相手先発ペドロ・アビラのチェンジアップをしっかり捉え、右翼に運んだ。24号2ランは両リーグトップ、シーズン40発ペースと力強くチームをけん引する。

 投げては先発左腕・伊藤将司が7回3安打無失点、8回から石井大智、9回から登板した岩崎優が失点し、1点差とされたものの、バックの堅守も光り、1点差の価値ある勝利をものにした。これでチームは5カード連続の勝ち越し、貯金は今季最多の19、2位巨人とのゲーム差を9.5と独走態勢を着々と固めている。

 佐野氏は阪神の戦いぶりについてこう語る。 

「広島、巨人、DeNAなど、ほかのチームの戦い方を見ても、勢いがつくような戦い方をしていません。反発するような感じがない」とコメント。

 チームの強さの理由に関しては「藤川監督のビジョンというものをチーム全体が把握しているというのが大きい。勝てないときは受け身になりがちだが、そういう風なところを見せない。藤川監督を選手が信頼している」と指揮官と選手の信頼関係が強みになっていると指摘する。

 2023年に日本一を達成。岡田彰布前監督時代とのチームカラーの違いについても言及。

「岡田監督の時はやっぱり、レジェンド監督なんでね。厳しい面もある」としながら、選手に与える影響に関しても考察。「選手が岡田監督の目とか呼吸など、いろんな所を気にしていたと思うんですけど、いまのチームにはそういうピリピリした部分は感じられない。大げさに言うと『うしろにうちらの大将がいるからやったろうぜ!』というのを感じる」(佐野氏)

 選手との連携については「マスコミを通じて選手に発信しない監督ですが、選手があれだけ監督のことを信頼しているということは、ベンチ裏ではきっちりコミュニケーション取っているということでしょうね」と指摘。

 それを体現しているのが、打点王争いも話題の好調な森下翔太だとした。

「森下選手を見ていても風通しがいいのを感じますね。森下選手はどちらかというやんちゃな発言が多い選手ですが、のびのびとやっている」

 最後には「どちらかといえばこれまでは近本のチームだったが、いまは森下、佐藤輝がチームを引っ張りだした。それが周囲にもいい流れを呼び込んでいると思います。いい意味で阪神の野球にはところどころに荒々しさがある。ほかの5球団にはないところですね」と今後も強さが続いていくとした。

 すでにマジック点灯も間近とされる藤川阪神が今夏を熱く盛り上げていきそうだ。

【さの・しげき】

1968年4月30日生まれ。愛媛県出身。1991年に近鉄バファローズ(当時)に入団。卓越したコントロールを武器に中継ぎ投手の筆頭格として活躍。中継ぎ投手としては初の1億円プレーヤーとなる。近年は糖尿病の影響により右腕を切断。著書「右腕を失った野球人」では様々な思いをつづっている。

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