7月11日(金) に開幕した「第107回全国高等学校野球選手権愛媛大会」。最速144キロ右腕・當眞 嗣胤投手(3年)が率…

7月11日(金) に開幕した「第107回全国高等学校野球選手権愛媛大会」。最速144キロ右腕・當眞 嗣胤投手(3年)が率い、今季県内公式戦負けなしの第1シード・新田を中心に、連合チーム3チームを含む55校49チームが覇を競う中、最もNPBスカウト陣の熱視線を集めているのは西条の最速143キロ左腕・宇佐美 球児投手(3年)だ。

 彼の強みはラプソード測定でNPB上位レベルの2300回転をマークしたストレートと、どのスカウトに聞いても「決め球になる」と高評価が付く縦横球速変化自在のスライダー。昨夏はロングリリーバーとして「3年生の夏を終わらせないために、全部出し切る」気持ちを出し、西条を愛媛大会準優勝に導いたことにより、注目度を一気に上げた大型左腕は、いよいよ最後の夏を迎えようとしている。

 この春以降、多角的に成長の時を過ごしてきた。一番大きかったのは4月から8年ぶりに母校へと戻ってきた菅 哲也監督との関わりだ。春季県大会までは愛媛大会直後に負った右肋骨骨折の影響が大きったが、登板を重ねるごとに状態を上げ準決勝まで進出した春県大会での課題と収穫を糧に、指揮官から授かった「エースの自覚と覚悟」を体現すべく、まずはフィールディング、けん制などの課題克服に着手した。

 同時に練習試合ではストレートの質にこだわった投球を続け、5月上旬からはこのままでは変われない」と、あえて自身の象徴ともなっていたグラブを高く上げてから振り下ろすフォームを修正した。「下半身主導の動きと肩の入れ替え方」をテーマに、よりボールに回転がかかる新フォームを完成。ずっと追究してきた「力感ないフォームからキレの良いボールを投げる」ことを体現した上で「自分で修正するポイントをつかむことができた」と本人も手ごたえを得ている。

 宇佐美がもう1つ取り組んでいるのは感情のコントロール。これまでは気持ちが投球内容に影響する場面も多々あったが「気持ちを出すことによるデメリットもある。マウンドさばきでエースの姿を見せたいし、隙を与えない冷静な投手になりたい」と内なる闘志を重視するようになった。「自分のピッチングで試合が決まる。すべては自分次第」とあえてプレッシャーを背負う夏に、どんな化学変化が起こるのか楽しみである。

 愛媛大会前最後の練習試合では観音寺第一(香川)に対してリリーフ2回、その翌日にも池田(徳島)相手に先発で6回を投げいずれも無失点と、状況に応じての登板テストも万端。まずは16日(火)14時15分から坊っちゃんスタジアムで行われる川之石との愛媛大会初戦で「この夏は集大成。甲子園に行って、ドラフト会議では絶対に高卒支配下指名を受ける」大型左腕の意気を見守りたい。