猛暑に代表される「気候変動」が日本はもちろん、地球規模で大問題になっている。サッカーもその影響を免れることはできず、ア…
猛暑に代表される「気候変動」が日本はもちろん、地球規模で大問題になっている。サッカーもその影響を免れることはできず、アメリカで開催中のクラブW杯でも、突然の落雷などで試合が2時間近くも中断するなど、さまざまな実害が出ている。“世界最大のスポーツの祭典”であるワールドカップだが、今後も開催できるか分からないと警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト大住良之氏だ。ワールドカップ、ひいてはサッカー競技を守るために、我々は今後どうすればいいのか? 大住氏が「開催日程」の変更などを含めた、大規模な「構造改革」を提案する!
■暑さ対策で「クォーター制」採用
東西では時差も3時間。当然、気候もそれぞれにまったく違う。その中には、メキシコの3都市やアメリカのマイアミといった猛暑が予想される都市もあり、「最北」のバンクーバー(カナダ)や、それに近いシアトル(アメリカ)など、通常の夏なら快適な気候の町もある。
暑さとともに、頻発する雷にも対応するには、「全屋根式スタジアム」での試合開催しかない。しかし、今回の16会場のうち、そうした設備を持つのは、ダラス、ヒューストン、アトランタ、ロサンゼルスのアメリカ4会場と、バンクーバー、計5会場しかない。他は、暑さや雷雨を心配しながらの開催となる。
暑さ対策としては、後藤さんも主張していた「クーリングブレーク」を用いた実質的な「クォーター制」の採用や、15分ごとの飲水などの提案がされている。いまや世界の72の国のプロサッカー選手協会が加盟し、影響力を持つようになった国際プロサッカー選手会(FIFPRO)は、2026年大会ではハーフタイムを20分間にすることを求めている。
■選手も観客も「危険のない」時期
しかし、どれも根本的な解決にはつながらない。ワールドカップを選手も観客も危険なく楽しめる大会にするために、「10月開催」を原則とすることを提案したい。この時期なら、世界の多くの地域で比較的、穏やかな気候に恵まれるはずだ。
2026年の次、2030年大会は、スペイン、モロッコ、ポルトガル3国の共同開催で、それにウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイの「百周年記念会場」が含まれることになっている。6月なら、南米の3会場は「冬」に当たるが、欧州から北アフリカの3か国は、アメリカやメキシコ以上の暑さが予想される。そして、その次、2034年大会はサウジアラビアである。
世界の多くの地域では、サッカーシーズンは8月に開幕し、翌年の5月に閉幕する。ワールドカップや欧州選手権といった大会を、シーズンオフの6~7月ではなく、10月に持っていけば、選手は毎年しっかりオフをとることができ、ケガが減り、選手寿命も伸びるのではないか。
■サッカー「持続」のための構造改革
10月を「代表月間」とし、ワールドカップの中間年に欧州選手権、コパアメリカ、アジアカップなどの「地域選手権」を開催する。そして奇数年には、今FIFAが企画している地域間交流の大会を世界各地で開催したらどうか。
そのためには、世界中の国内リーグを含めたサッカー界の「大構造改革」が必要だ。トップリーグのクラブ数を減らして日程に余裕をつくり、シーズンが始まって2か月が過ぎ、トップフォームになった選手たちを集めて「代表月間」に入れば、準備期間もそう長くなくて済むはずだ。
凶暴化する一方の地球環境は、サッカーにとって最大の脅威だ。それに立ち向かうために、自己の利益だけを追求するのではなく、全世界のサッカーがうまく「回って」いくシステムに切り替えなければならない。それによって、ワールドカップを、そしてサッカーを「持続可能」なものとしていかなければならない。