ジャパンは後半に追い上げを見せたが、あと一歩及ばなかった(C)産経新聞社 7月12日にラグビー日本代表(以下ジャパン)と…

ジャパンは後半に追い上げを見せたが、あと一歩及ばなかった(C)産経新聞社
7月12日にラグビー日本代表(以下ジャパン)とウエールズ代表のテストマッチ第2戦が行われ、ジャパンは22-31で敗れた。通算対戦成績はジャパンの2勝14敗。ウエールズは2023年のワールドカップ予選でジョージア代表に勝利して以来の勝利で、テストマッチの連敗記録を18で止めた。
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「ハイパフォーマンスユニオン」とされる強豪国からジャパン史上初の2連勝をかけて臨んだ一戦だったが、残念ながらウエールズの底力にはね返される結果となった。敗因はいくつか考えられるが、筆者が考える大きな敗因は以下の三つだ。
①チームとしての「決めムーブ」がない。
②ミスの多さが解消できていない。
③動きの落ちたディラン・ライリーを最後まで出場させた。
順に説明していこう。まず①だが、この試合でジャパンが奪った三つのトライはいずれも個人技または相手のミスにつけこんだものだった。チーム初トライは、ゴール前という極度の興奮状態にありながら、冷静にルールを遵守した竹内の「個人技」と言えるもの。2本めのトライはもはや彼の代名詞と言って良いワーナー・ディアンズのキックチャージから奪ったもの。これも高度な個人技によるものだ。3本めのディラン・ライリーのトライは相手のパスミスのボールを拾い上げて奪ったもので、いわばラッキーパンチと言うべきトライだった。
いずれのトライもチームとしての意図した仕掛けで防御網に穴を開けて奪ったものではない。相手にかけるプレッシャーが増したことで生まれたトライだとも言えるので、チームとしての熟練度は上がっていることは確かなのだが、チームとしての「崩し」や「仕掛け」のパターンをいくつか持っておき、時宜に応じて使い分けられるような状態にまで仕上げておかないと、今後に続く強豪相手の試合では苦しいだろう。この試合は、極端に言えばウエールズの「スタミナ切れを待つ」という作戦しかなかったように見えた。どん底のウエールズよりも格上の相手に同じ戦法で臨んでも、先に息切れするのはジャパンの方だ。
②について、良い調子で攻め込んでいる際にノック・フォワードを犯す、あるいは接点でスチールを喰らってリズムに乗り切れないという場面が多々あった。特に密集からの展開で最初にコンタクトすることの多かったインサイドCTB中野のところでのミスが目立った。ノック・フォワードは個人的なミスなので中野の精進を期待するしかないが、被スチールに関しては、ファーストコンタクト直後の働きかけをどうするのか、そして中野というプレーヤーがどの程度まで前進可能なのかという共通認識がまだチーム全体に浸透していないように感じられた。せっかく中野が持ち味の強いフィジカルでゲインしても、それがかえって孤立につながり、スチールされてしまうのでは意味がない。今後も中野をファーストコンタクトに使う場面は少なからず発生するだろうから、その際の対応については認識を共有しておく必要があるだろう。
③は今回のテストマッチ最大の謎だ。後半30分過ぎに脚が攣ってしまって以降、明らかにライリーの運動量は落ちたし、インプレー中にも懸命にストレッチを繰り返す姿が見受けられた。気持ちはあっても身体がついていかない状態だったのではないだろうか。そして控えにはまだ植田和磨が残っていた。本来がWTBである植田には、特に守備面でアウトサイドCTBを任せるのは不安だという判断だったのだろうとは思うが、少なくとも動きたくても動けない状態のライリーよりは戦力になったのではないだろうか。この件に関しては、首脳陣が明らかにしていただきたい謎ではある。
この2連戦は収穫もあったが、それ以上に現状の課題が浮き彫りになった。ジャパンとしてのテストマッチは8月末まで一時休止。その後10月末から11月末にかけて、豪州やアイルランドといった強豪と戦うオータムシリーズが行われる。ウエールズとも再戦が予定されている。オータムシリーズまでの期間で、今シリーズであらわになった課題をどこまで解消できるか。ジャパンの真価が問われる夏となる。
[文:江良与一]
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