(13日、第107回全国高校野球選手権広島大会2回戦 竹原10―0美鈴が丘) 今年の夏も、ベンチに監督の写真を置いた。…

 (13日、第107回全国高校野球選手権広島大会2回戦 竹原10―0美鈴が丘)

 今年の夏も、ベンチに監督の写真を置いた。「監督、見ていて下さい」との思いを込めて――。

 2年前の12月、迫田穆成(よしあき)監督が84歳で亡くなった。迫田監督は広島商で選手、監督として全国制覇し、広島の高校野球を引っ張ってきた。その迫田監督がいる竹原で野球がやりたいと、石本彬(あきら)主将(3年)は入学した。

 指導を受けたのは1年足らずだったが、色々なことを教わった。

 ヒットを打って大きくガッツポーズをした仲間が、厳しく叱られたことがあった。「相手がいるから試合ができるんだ」。相手への敬意を忘れないよう、今も肝に銘じている。

 ある時、マクドナルドにほかの同級生と連れて行ってもらった。「好きなものを買ってこい」と1万円札を渡され、数人で合計3千円程度で済ませてお釣りを渡すと、「合格じゃ」。おごらず、謙虚であれ。そう教えられた気がした。

 1年生大会の決勝前に言われた言葉は、いつも思い出す。「決勝戦だからといって力を入れず、いつも通り自分たちの力を出し切りなさい」

 迫田監督の訃報(ふほう)はショックで、信じられなかった。迫田監督の野球を終わらせてはいけないと思い、新チームになると主将に立候補した。

 美鈴が丘との夏の初戦。打席に入る前、迫田監督の遺影の隣に座ると、「思い切ってしっかり振ってこい」と鼓舞されているように感じた。

 一回の初打席。初球を思い切り振り抜くと、右翼への安打となり、相手失策の間に本塁を踏んだ。チームはその後も得点を重ね、五回コールド勝ちを収めた。

 目標は「迫田監督と、甲子園に行くこと」。迫田監督には「次も勝ちます。見ていて下さい」と報告するつもりだ。(遠藤花)