(12日、第107回全国高校野球選手権群馬大会2回戦 健大高崎5―0藤岡中央)  苦難を乗り越えながらも高校野球に打ち込…

(12日、第107回全国高校野球選手権群馬大会2回戦 健大高崎5―0藤岡中央)

 苦難を乗り越えながらも高校野球に打ち込んだ球児たちがいる。藤岡中央の宍戸一冴(いっさ)(3年)もその一人。12日にあった2回戦で、チームは、今春の選抜大会4強、春の関東大会優勝の健大高崎に善戦した。

 宍戸は重度のアトピー性皮膚炎をもつ。1年生の8月、群馬大会で敗れて新チームが発足したばかりの野球部に体験入部した。元々中学校まで野球部だった。高校では一度バドミントン部に入ったが、やはり野球が気になっていた。

 夏のさなか。強い日差しと発汗であせもができ、肌が乾燥したり炎症を起こしたりして、かゆくて痛い。思春期、見た目にも激しく荒れた肌では、学校へ行くのも嫌になるほどだった。「これではつらすぎて続けられない」。部員たちとの練習は楽しかったが、1週間ほどでなくなく辞めた。

 2年生になった昨年6月、小磯浩孝監督(57)と一條武久部長(53)から「夏の大会に向けて人数が足りない。力を貸してくれないか」と声を掛けられた。

 一度辞めてから、病院に相談し、アトピーの治療法を見直していたところだった。毎日風呂後に薬を塗り、夕食後には薬を服用。2週間に1回、腹部に自ら注射を打つと、アトピーの症状を大幅に軽減できるようになった。注射は痛くてつらいが、劇的な効果が感じられた。登校時ももちろん部活時には必ず、練習着やユニホームから露出する顔、首、腕には日焼け止めを塗り、紫外線から肌を守っている。「日焼け止めと自分に合った治療法を見つけたお陰で野球を続けてこられた」

 だが、3年生になった今年の春、大きなけがに見舞われた。春の県大会1週間前の練習試合でスライディングした際、右ひざの後十字靱帯(じんたい)断裂のけがをした。全治3カ月と言われ、しばらく安静を余儀なくされた。夏の群馬大会では右ひざに装具を着けながら右翼手や一塁コーチャーを務め、最後まで戦った。

 チームは今大会の開幕試合で1回戦を突破。20人に満たない選手たちで力を合わせ、健大高崎を相手に九回まで戦い、終盤には無死満塁の好機も作ったが、0―5で敗れた。

 小磯監督は「困難を抱えながらも、誰よりも真面目に頑張ってくれた」。宍戸は試合後、「グラウンドに立てるのは当たり前のことではないと思いながら、全力で戦った。高校球児になって、いろんなことへの取り組み方が変わった。あっという間の1年間で、すごく充実していて楽しい時間だった」と語った。(中沢絢乃)

■シードの健大高崎、桐生第一、前橋が勝利 接戦次々と

 第107回全国高校野球選手権群馬大会(朝日新聞社、群馬県高校野球連盟主催)は12日、3球場で2回戦6試合があった。第1シードの健大高崎が5―0で藤岡中央に勝利。藤岡中央は佐藤、吉村の投手リレーで粘り強く抑え、健闘した。第2シードの桐生第一はコールド勝ち。シードの前橋が館林に、前橋工が高崎北に競り勝った。高崎は市太田に勝利、3回戦は県内トップの進学校同士の前橋との対戦となる。高崎商大付が高崎商との実力校同士の対戦を制した。13日は3球場で2回戦6試合、14日は2球場で4試合が予定されている。