(12日、第107回全国高校野球選手権大阪大会2回戦 大阪公大高専0―13星翔=5回コールド) 試合前の円陣。「最後の夏…
(12日、第107回全国高校野球選手権大阪大会2回戦 大阪公大高専0―13星翔=5回コールド)
試合前の円陣。「最後の夏。たとえミスをしても、声を出し合って切り替えていこう」。大阪公大高専の前出孝介監督(19)は、選手たちにそう声をかけてグラウンドに送り出した。
5年制の高等専門学校の5年生。大阪公大高専は指導者と選手の距離を縮めようと、2023年から在学生が高校野球の監督を務めている。
前出監督も2年前まで高校野球の試合に出ていて、「高専大会」では今も選手の一員だ。毎日、同じ練習メニューに取り組み、うまくプレーできれば笑い、できなければ肩を落とし。選手と同じ目線でこの夏を迎えた。
四回が終わって0―13。一緒にプレーはできないが、ベンチの前列から「気にするな!」と声をかけ続けた。
五回表、先頭で打席に入ったのは公式戦で安打を打ったことがない川副嵐士選手(3年)。2球目に食らいつき、左前に「初安打」を放った。泥臭く練習をしてきて、たどり着いた1本。前出監督は自分のことのように、喜びを爆発させた。
敗れたことで前出さんも監督を卒業し、4年生と交代する。そうやって、監督と選手が一緒に泣き、笑う野球は引き継がれていく。この日、次の目標への思いを語った選手が一人。川端翔悟主将(3年)は「優しくて、ここぞという場面で引き締めてくれた。自分も前出さんのように選手に寄り添える監督になりたい」。(渡辺萌々香)