(11日、全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 入間向陽7―0開智未来) 入間向陽の茂木友春投手(3年)は、緊張しやすい。負…

(11日、全国高校野球選手権埼玉大会2回戦 入間向陽7―0開智未来)

 入間向陽の茂木友春投手(3年)は、緊張しやすい。負ければ引退の大会初戦。手が震える。そんなとき目線を本塁に向けると、藤田朔也捕手(3年)が大きく開いたミットを構えている。いつも通り投げろ、と言っているみたいに。10年目の見慣れた光景に、自然と肩の力は抜けていく。

 小学3年生の時から同じ少年団でバッテリーを組んできた。自宅は徒歩10分の距離で、家族ぐるみの付き合いだ。中学、高校と同じ学校に進み、調子の良いときも悪いときも、いつも隣で練習してきた。

 今夏の初戦。息の合ったバッテリーは三塁を踏ませぬ活躍を見せる。仲間の連打で大量得点し、七回裏コールド勝ちまであと1アウトに追い込んだ。

 6球目、内角に速球をみせる。

 最後は低めのスライダーで決めたい。茂木投手が藤田捕手のサインのぞき込むと、幼なじみのバッテリーは同じ考えだった。ふと笑みがこぼれた。「相棒」に言葉は不要だった。最後の打者を空振り三振に仕留めた。

 2人は高校で野球を辞めるつもりだ。だからこそ「一試合でも長くこのバッテリーを続けたいです」。お互い照れながらはにかんだ。(恒川隼)