(11日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦、麻布9―6大森) 劣勢だった麻布が終盤、試合を一気にひっくり返し…

(11日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦、麻布9―6大森)

 劣勢だった麻布が終盤、試合を一気にひっくり返した。

 1点を追う七回表1死一塁、麻布の攻撃。主将の亀徳(きとく)直樹(3年)はベンチで「勝負どころはここだ」と檄(げき)を飛ばし、打席に向かった。つりかけていた足で踏ん張れなかったが、内角の変化球を振り抜くと左越え安打に。後続の適時打で勝ち越しのホームベースを踏んだ。その後も打線が続き、この回、一挙に5点を奪い、試合を決めた。

 今夏の目標は4回戦突破だ。2年前の夏、麻布は数十年ぶりに東東京大会の4回戦に駒を進めた。

 亀徳はその試合、遊撃手として先発。甲子園に出場経験がある修徳に敗れたものの、4失点と善戦した。神宮球場のスタンドに大勢が詰めかけた光景が忘れられず、「自分の代で、もう一度あの感動を体感したいと誓った」

 だが、昨秋、右ひじを痛め、十分に練習できなくなった。もどかしさを感じる日々。ストレッチなど、自分にできることを確実に重ねた。

 周囲はそんな様子をしっかりと見ていた。夏の大会の開会3日前の朝。山田裕一郎監督は背番号1番を亀徳に手渡した。「1回、2回(の投球)でも頼むぞ」。亀徳で負けてもメンバーは納得できる、と考えてのエース番号だった。

 迎えた初戦。亀徳は遊撃手として主将の役割を果たした。初回、先制の適時打を放つと、塁上で拳を突き上げて雄たけびを上げ、チームを鼓舞。守りでは、マウンドに立った後輩の曽我紀朝(のりとも)(2年)がピンチになる度、「俺らが打って援護するから、気楽に楽しもう」などと声をかけた。

 目標まであと2勝。「高まった士気のまま、集中して全員野球で勝ち上がりたい」。この仲間となら、達成できると信じている。=神宮(武田遼)