(11日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦、明大中野8―0上野学園) 左翼手から返ってきた球は、本塁から少…
(11日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦、明大中野8―0上野学園)
左翼手から返ってきた球は、本塁から少しそれていた。
「自分がアウトにするしかない」
上野学園の捕手、堀井陸(3年)は捕球するとすぐに横っ跳びし、滑り込んでくる相手走者に手を伸ばした。
タッチアウト。
四回表2死二塁の場面で、相手の追加点を阻むビッグプレーだった。
外野手だった1年生の秋に、出場機会を求めて捕手に転向した。だが、捕手出身の小川貴智監督が求めるレベルは、想像以上に高かった。
配球や守備位置の指示、チームを引っ張るリーダーシップ――。昨秋と今春の大会では思うように力を発揮できず、「チームで一番苦しんで、涙を流していた」(小川監督)という。
ただ、この日は小川監督も「自立した姿を見せてくれた」と目を細める出来だった。エース山崎元慈(はるちか)(同)の緩急がついた球を低めに集め、七回には自らの判断で相手の4番打者を申告敬遠し、満塁策をとった。後続を空振り三振と二ゴロで抑え、見事にはまった。
「苦しかった時期を越えて、つよい自分になれた」。終盤まで接戦を演出した堀井に、もう涙はなかった。=Gタウン(上保晃平)