(11日、第107回全国高校野球選手権宮城大会1回戦 仙台一11―0=五回コールド) 仙台一の選手が口をそろえて「欠か…
(11日、第107回全国高校野球選手権宮城大会1回戦 仙台一11―0=五回コールド)
仙台一の選手が口をそろえて「欠かせない」と言う存在がいる。「学生コーチ」を務める星野優真さん(3年)と小川航希さん(3年)だ。
彼らの主な仕事はノック打ち、練習メニューの作成、そして他の部員とともに「データ班」として対戦校や自チームを分析すること。
このバッターはどの方向に打球を飛ばすことが多いのか。このピッチャーのストライク率は何%なのか。膨大なデータから傾向をつかみ取る。
選手たちは彼らの分析に基づき、打者ごとに守備位置などを調整する。
選手たちの評判は上々だ。右翼手の安斉由藍(ゆら)選手(3年)は「守備のシフトがはまって、どんぴしゃで打球が飛んでくることもある」と明かす。
学生コーチの星野さんは高校入学後、けがに苦しみ、昨秋は同じ学年で1人だけベンチを外れた。自分が選手としてチームに貢献するのは難しいのではないかと思った。
それでも野球が大好きだという星野さん。「チームが勝たないと楽しくない。より勝利に貢献できる道を選ぼう」と自ら学生コーチを志願し、今ではデータ分析そのものに楽しさを感じている。
星野さんは、自チームの投手の分析も担当する。「どの投手もストライク率が上がっている」と仲間の成長をデータで感じている。「プレーヤーとして試合に出られなくても、チームの力になれることがありがたい」
データ分析に精力的に取り組む一方で「データが全てではない」と言い切る。「誰よりも勝ちたいという気持ちがある。その気持ちを前面に出して、みんなの背中を押していきたい」。気持ちのフォローも忘れない。
もう1人の学生コーチ、小川さんは前主将・小川郁夢さん(現・慶応大)の弟。兄の影響で小学3年生から野球を始めたが、高校に入り「兄の影響で野球を続けているだけで、心の底から楽しめていないのではないか」と感じるようになった。
モチベーションも下がり、日々努力して練習に励む周りの部員に対し、申し訳なさも感じるようになった。それでも仲間といる時間が楽しく、部活はやめたくなかった。
そこで、学生コーチとして部員を支えると決めた。今では、プレーヤーの時よりも部活に行くのが楽しい。時々、監督と選手の間で板挟みになることもあるが「中間管理職の気分です」と笑う。
抽選会で組み合わせが決まると、すぐに対戦校の分析を始めた。家に帰ってからも、時間が許す限り、データとにらめっこしている。「チームのために、やれるだけのことを一つでも多くやる」
初戦は打線がつながり、11―0のコールド発進となった。次戦以降に向け、星野さんは「ポジティブな声かけでチームを奮い立たせたい」。小川さんは「一戦必勝で目の前の試合にこだわっていけば大丈夫」と意気込んだ。(岸めぐみ)