2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川…
2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川崎フロンターレと鹿島アントラーズの強豪対決を、サッカージャーナリスト後藤健生が取材。この一戦から、J1の「今シーズンと未来」が見えてきた!
■安心して「任せられる」指導者は
この3人の監督のうち、鬼木達監督は昨シーズンまでは川崎を率いて4度も優勝に導いていた。また、長谷部茂利監督はこれまでアビスパ福岡を率い、毎年のように戦力不足を指摘される中で安定した順位を保ち続けていた。
そして、リカルド・ロドリゲス監督は2022年まで監督を務めた浦和レッズでは期待通りの結果を出せなかったが、その前は4シーズンに渡って徳島ヴォルティスを率いて、ポジショナルプレー(選手たちがボールを保持している際に適切な位置に立つことで、数的優位や質的優位を作り出し、相手の守備を崩すことを目指す攻撃戦術)を駆使して、徳島をJ1昇格に導いた。
つまり、3人の監督はいずれもJリーグで十分な実績のある指導者だった。
同じく新監督として今シーズン期待されていた横浜F・マリノスのスティーブ・ホーランド監督は、「元イングランド代表コーチ」という肩書を引っ提げて日本にやって来たが、Jリーグではまったく経験がなかった(おまけに、トップリーグの監督経験もなかった)。
やはり、Jリーグで結果を出した実績があり、Jリーグのことを熟知している指導者のほうが安心してチームを任せることができるといっていいだろう。
クラブとして自分たちのやりたいサッカー・スタイルを考慮しながら、Jリーグで実績がある有能な指導者を迎えたクラブが、現在、リーグ戦で上位争いに顔を出しているということだ。
■移籍で「なくてはならない」存在に
指導者だけではない。選手でも、実績のある選手への信頼感は高い。今シーズンも前の所属先で実績を残しながらも新天地を求めて移籍を決断し、新しい環境の下で花開いている選手は多い。
昨年まで柏レイソルで孤軍奮闘していたマテウス・サヴィオは今シーズン、浦和に移籍。流動的な攻撃を構築するMFとして攻撃を牽引する存在となった。
そして、マテウス・サヴィオと交換トレードのような形で浦和から柏に移った小泉佳穂も、リカルド・ロドリゲス監督の下で流動的な柏の攻撃になくてはならない存在となった。
移籍が成功した例である。
その他にも、夏の移籍で柏からサンフレッチェ広島に加わった木下康介なども、ターゲットマンとして加藤陸次樹やジャーメイン良とは異なったスタイルの持ち主なので、3人の間のコンビネーションが確立されれば攻撃陣のバランスが良くなりそうだ……。
若手選手でも、U-20日本代表の一員である佐藤龍之介(18)は、今シーズン、昇格組のファジアーノ岡山に移籍して、出場機会を得てブレーク。6月には日本代表にもサプライズ招集された。
■チームに「新しい色」をもたらすもの
監督も、選手も、移籍することによって新しい才能を発揮できる例がたくさんある。活発な移籍が選手や指導者の開花をもたらすのだ。そして、チームにも新しい“色”をもたらす。
従って、Jリーグの中での選手や指導者の交換が盛んに行われるのは当然のことだろう。
だが、それだけでは“たらい回し”になってしまう。
若手選手の台頭も興味をひかれるが、今後は指導者の世界でも若い新しいタイプの指導者に登場してほしいものだ。そして、海外からこれまでのJリーグの殻を打ち破るような逸材を導入してほしい。
かつて神戸にやってきたアンドレス・イニエスタのようなビッグネームでもいいし、将来、世界のサッカーをリードしていくような若き逸材でもいい。
Jリーグで実績のある選手や指導者が移籍によってさらに輝くと同時に、外の世界からも新しい選手や監督を導入してほしいものだ。それが、Jリーグの競技力のさらなる向上につながるはずだ。