降雪が多い北海道では、冬場の部活動でビニールハウスを使う学校が多い。近年、そのビニールハウスで、大会開催地との気温差を…
降雪が多い北海道では、冬場の部活動でビニールハウスを使う学校が多い。近年、そのビニールハウスで、大会開催地との気温差を埋めるため、暑さ慣れ対策をする高校も出てきた。
創部60年以上で、選抜大会に出場歴がある大谷室蘭高校。同校野球部では春以降も、学内のビニールハウスを使用し、外気温より高い室温での練習を取り入れているという。
その理由は、室蘭市の気温にある。
気象庁によれば、昨年8月の1日あたりの最高気温の平均値は、札幌が28.4度に対して室蘭は26.0度で、2度以上低い。越後屋亨監督(47)は「室蘭は夏が涼しい。試合をする札幌の暑さにやられてしまうことがある」と振り返る。
甲子園は札幌よりもさらに最高気温が高い。甲子園出場の目標を見据え、雪が消えてグラウンドが使えるようになった春以降も、ビニールハウスを使った練習を取り入れる。
練習の冒頭15分ほど、ビニールハウスの中でリズムに合わせて体を動かすトレーニングや、ジャンプなどの基本動作を繰り返す。越後屋監督は「熱中症にならないよう時間やメニューを調整しながら、水分補給などの対策を徹底している」と話す。
6月17日、練習中のビニールハウスの中に入った。外よりもむわっとした空気が、本州の夏を思わせる。そんな中、笑顔で体を動かしていたのが、越後屋快主将(3年)だ。越後屋主将は、ビニールハウスでの練習について「気温差でパフォーマンスが落ちるのを防げていると感じる」と言う。
暑さに慣れることは効果があるのか。
国際医療福祉大学成田病院・救急科部長の志賀隆医師(49)は「効果がある」とし、同時に注意点を強調する。
まず前提として、ビニールハウスを使用する場合、室内の気温や湿度を計測し、熱中症を誘発しないようにするべきだという。その上で「熱中症を予防するために、体を暑さに慣らす『暑熱順化(しょねつじゅんか)』は大事だ」と指摘する。
暑熱順化が進むと、汗をかく量が増えることなどにより、体の表面から熱を逃がしやすくなる。暑さが本格化する前に、暑熱順化を済ませておくことが望ましいという。
志賀医師によると、暑熱順化のやり方としては、ビニールハウスのように「慣れたい暑さ」に近い環境で、5~7日ほどかけて短い時間から運動を始め、徐々に運動時間を増やしていく。1日の部活動の20%程度の時間から始めるのが望ましいという。
志賀医師は「対策をしっかりした上で、地域の特性に合った工夫をするのは大事なこと」とし、「ぜひ、部活動を持続可能なものにしてほしい」と話した。(朽木誠一郎)