2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川…
2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川崎フロンターレと鹿島アントラーズの強豪対決を、サッカージャーナリスト後藤健生が取材。この一戦から、J1の「今シーズンと未来」が見えてきた!
■ロングボール狙いを封じる「交代」
川崎フロンターレの長谷部茂利監督はハーフタイムに2人の交代を使った。伊藤達哉は、前半のゴールシーンの後、足を痛めていたのでマルシーニョに交代。そして、再三裏を狙われていた丸山祐市に替えてジェジエウが起用された。センターバックを右にジェジエウ、左に高井幸大という形にして、鹿島アントラーズのロングボールの狙いを封じようとしたのだろう。
ところが、51分、鹿島の鈴木優磨が守備ラインの裏に飛び出した溝口修平を走らせると、入れ替わられたジェジエウが後ろから溝口を引き倒してしまう。荒木友輔主審はすぐにレッドカードを提示したが、ここでVARが介入。溝口がわずかにオフサイドだったとしてジェジエウへのレッドカードは取り消され、川崎は命拾いした(ただし、ジェジエウはその後もやや不安定なパフォーマンスが続いた)。
そして、68分。川崎の脇坂泰斗やマルシーニョが前線から激しくプレッシャーをかけて相手のミスを誘い、ボールを奪った山本悠樹が素早く左サイドの家長昭博にロビングを送ると、家長はスライディングしながら折り返し、走り込んだマルシーニョが決めて川崎が逆転する。
その後は、川崎が守り、鹿島が攻める展開となった。しかし、前半からロングボール主体だった鹿島がパスをつないでのビルドアップに切り替えようと試みたのだが、切り替えは容易なことではなかったようで、鹿島の反撃は中途半端なものになってしまった。
「ロングボールが狙いであっても、短いボールも織り交ぜて使い分けないと……」と鬼木達監督は苦言を呈した。
■鹿島の反撃を「難しくした」のは…
ロングボール狙いが功を奏して1点を先制した鹿島と、そうした相手の狙いをかいくぐって自分たちのストロングポイントであるパスをつなぐ攻撃で逆転してみせた川崎。そして、両監督の駆け引きもあって見ごたえのある一戦となった。
また、前半のうちからピッチのあちこちで激しいバトルが展開され、小競り合いも多発する中、1点をリードされた鹿島の選手たちがエキサイトしすぎて冷静さを失ったことも、鹿島の反撃を難しくしたような気がする。鹿島はこのところ結果を出せずにいたことで、焦りもあったのだろう。一方の川崎は先制点を奪われたものの、冷静さを保って戦うことができた。
鹿島の鬼木監督、川崎の長谷部監督。どちらも、就任からようやく半年が経過したところだが、すでにチームを掌握して新しい色を付けながら、チームの本来のストロングポイントを生かしたチームづくりを進め、結果も出している。
■鹿島・川崎・柏「3チーム」の共通点
ACLEで決勝大会に参加した川崎と横浜F・マリノスは、このところ連戦を強いられていたが、7月に入ったところでようやく各チームの消化試合数が23でそろってきた。だが、このところ結果が伴っていない鹿島は、第23節の敗戦で首位の座を明け渡し、柏レイソルが代わって首位に立った。その他、昨年の王者ヴィッセル神戸も2位に上がり、その後は3位の京都サンガF.C.から7位のFC町田ゼルビアまでが大混戦となっている。
さらに、FIFAクラブ・ワールドカップに出場していた浦和レッズは2試合未消化分の試合があり、町田との勝点差はわずかに「3」。浦和も上位グループの一つと考えていいだろう。つまり、柏から浦和までの上位8チームにはまだ優勝の可能性が残っていると言っていい。
先ほど、「鬼木、長谷部両監督が就任早々に結果を残している」と書いたが、上位8チームのうち新監督が率いているのは、鹿島、川崎のほかにリカルド・ロドリゲス監督率いる柏レイソルの3チームということになる(浦和のマチェイ・スコルジャ監督も今シーズン就任したばかりだが、以前にも浦和を率いていたのだから――不在中にかなりメンバーは変わってしまったが――新監督とは言えないだろう)。
リカルド・ロドリゲス監督も、昨年までの柏とはまったく異なった印象のパスをつなぎながら、スペースを使って選手が湧き出してくるような非常に攻撃型のチームを作った。就任半年で自らが目指す戦術を落とし込むというのは容易なことではない。鬼木監督や長谷部監督を含む3人の監督の指導力は称賛に値するだろう。