(9日、第107回全国高校野球選手権福岡大会2回戦 福岡大若葉3―2香椎) 香椎は七回に試練を迎えていた。相手は昨夏ベ…

 (9日、第107回全国高校野球選手権福岡大会2回戦 福岡大若葉3―2香椎)

 香椎は七回に試練を迎えていた。相手は昨夏ベスト4の福岡大若葉。先発の和田瑶平投手(3年)は六回まで1点に抑える好投を見せていたが、この回に連続安打を浴びて逆転された。1死一、二塁の場面でエースの浜田健太投手(同)がゆっくりと歩いて交代のマウンドに上がった。

 「ひるまずガンガンいこう」。江藤凌央(りお)捕手(同)が駆け寄って声をかけ、背中を軽くたたいた。浜田投手は最初の打者に四球を許したものの、後続を併殺に打ち取った。

 江藤捕手はふたりの投手それぞれに合った声かけを行ってきた。「和田は集中しすぎると周りが見えなくなるタイプ。だから、多めに声かけをする。浜田は去年の夏も経験していて自分のペースがある。崩さないよう必要なことだけを伝えるようにしていた」

 この日も調子の乱れを感じるとマウンドに向かった。流れが相手に傾いている時は、自分の靴ひもを結び直して投手を落ち着かせる時間を作った。3人の合言葉は「チェンジオブペース」。どんな時も自分たちのペースは崩さないという意味だ。

 チーム全体で「相手は格上だが、勝ちにいく」と臨んだ試合。しかし、逆転された1点を最後まで返すことができなかった。最後の打者が三振に倒れ、香椎の夏は終わった。

 江藤捕手は試合後、「負けたけど悔いはない。この先の人生でも一番楽しい瞬間だったと思います」。涙をぬぐいながら笑顔で語った。(小勝周)