2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川…

 2025年のJ1は、折り返し点を過ぎたが、第23節を終えても、大混戦が続いている。E-1選手権前、最後の試合となった川崎フロンターレ鹿島アントラーズの強豪対決を、サッカージャーナリスト後藤健生が取材。この一戦から、J1の「今シーズンと未来」が見えてきた!

■非常に熱かった「凱旋試合」

 7月5日の土曜日に行われたJ1リーグ第23節。いわゆる「ダービーマッチ」が全国各地で一斉に行われたが、僕は川崎フロンターレ対鹿島アントラーズの試合を観戦した。

「ダービー」ではなかったが、試合は非常に熱いものだった。

「鬼木達ダービー」と言ってもいい。昨シーズンまで川崎を率いて4度も川崎をJ1王者に導いた鬼木監督が今シーズンから鹿島の監督となった。そして、鬼木監督が勝負にこだわる采配を振るう鹿島は、前節までリーグ首位に立っていた。

 一方、今シーズンから川崎の監督に就任した長谷部茂利監督は守備面で細かい約束事を取り入れる一方で、川崎の持ち味であるパスを駆使したサッカーを展開。AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)では、アウェーの厳しい環境の中での戦いを勝ち抜いて決勝に進出した。そして、このところJ1リーグでもジワジワと順位を上げてきた。

 第23節の一戦は、その鬼木監督が等々力(Uvanceとどろきスタジアム)に凱旋する試合であり、また、海外移籍のためにチームを離れる川崎の高井幸大の等々力での最後の試合ということもあり、ふだんの試合以上の盛り上がりを見せた。

■カウンターの形から「先制」

 試合内容も、非常に濃厚で激しいものとなった。

 序盤からボールを握ってチャンスを作り続けたのはホームの川崎。

 7分に右サイドの家長昭博から中央、そして左にパスをつないで展開。山本悠樹のパスを受けた伊藤達哉が入れたロビングを、走り込んだ脇坂泰斗がボレーで狙う。さらに、8分にも山本のスルーパスを受けた伊藤がドリブルで切れ込んでクロスを入れたが、誰にも合わずに逆サイドに抜けた。9分には左サイドバックの三浦颯太のクロスにファーサイドにいた山田新が合わせたが、ヘディングシュートは枠を捉えられない。

 GK早川友基の好セーブも含めて、鹿島はゴール前に分厚い守備を構築。川崎がこれを崩せずにいると、25分に鹿島がカウンターの形から先制する。

 左センターバックの金太鉉(キム・テヒョン)が、右前方への斜めのロングボールを入れた。川崎の三浦が難なく処理するかと思われたが、松村優太が三浦の裏から走り込んで、そのままドリブルで持ち込む。そして、高井が寄せてくる逆を取って左サイドにやさしいパスを出すと、走り込んだレオ・セアラが冷静に流し込んだ。

 鹿島は32分にも、GK早川からのボールにレオ・セアラが走り込んで再び決定機を作った。このときは、川崎のCB丸山祐市との競争にレオ・セアラが競り勝ったもの。

 ボール・ポゼッションでは川崎が大きく上回ったものの、鹿島は割り切ってロングボールを使って勝負に出たのだ。とくに、川崎側から見た左サイド、つまり丸山、三浦のサイドが狙われた。

 試合前から、このサイドを狙うプランがあったのか、それともロングボールに対する相手の対応を見て「ここが弱点」と判断したのかは分からないが、明確に狙いがあったのは間違いない。

■後半の流れを決めた「判定」

 実際、連戦(川崎は中2日)の疲労のせいなのか、川崎の守備陣は集中を欠いていた(格の違いを見せていた高井も、立ち上がりにパスミス。鹿島の鈴木優磨がゴール正面でパスをカットしたが、シュートがわずかに右に外れた)。 

 なにしろ、鹿島の鬼木監督は、川崎の選手たちのストロングポイントもウィークポイントも熟知している指揮官だ。ポゼッション勝負では、川崎を上回ることは難しいと判断してロングボールとカウンターに活路を見出そうとしたのだろう。

 こうして、アウェーの鹿島が先制したものの、川崎は慌てることなくその後もパスをつないで攻撃を続けた。とくに前半の最後の時間帯は、鹿島陣内深くに押し込んで猛攻を続けた。

 山田のヘディングをGKの早川が片手でセーブするなど、鹿島は必死で耐えていたが、45+4分に川崎は同点とする。山本が蹴った右CKがファーサイドにこぼれたところを伊藤がボレーで決めたものだ(ゴール前に川崎の選手が残っており、オフサイドの可能性もあったが、VARのチェックでゴールが認められた)。

 前半のうちに同点となり、しかも鹿島の選手たちがこのゴールの判定に不満を持ったことが後半の展開につながっていく。

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