(8日、第107回全国高校野球選手権福岡大会2回戦 宇美商0-7星琳=八回コールド) 星琳の選手たちが育んできた「優し…
(8日、第107回全国高校野球選手権福岡大会2回戦 宇美商0-7星琳=八回コールド)
星琳の選手たちが育んできた「優しい野球」を初戦で存分に発揮した。
一回裏2死三塁、4番打者の大貝彩翔(あやと)選手(2年)が内角高めの直球を振り抜き、左翼へ先制適時二塁打を放った。直前の併殺で好機を逸しかけていただけに価値ある一打。「チャンスに1本打とうと思いきり振れた」
次打者が凡退し、二塁からベンチに戻る大貝選手に2~3人の選手がすかさず近寄った。「ナイスバッティング、守備も頑張ろう」。そんな声かけとともに、帽子やグラブ、飲み物を大貝選手に手渡し、脱いだヘルメットを受け取った。
控え選手が一人で担うことが多い役割だが、星琳では「素早く守備につけるように」と複数の選手で駆け寄るという。
この「チームワーク」は、グラウンドの外で育まれた。野球部員は毎週金曜の放課後、子ども食堂で配膳や子どもたちの世話を手伝っている。
飯田信吾監督(50)が「部員らに社会で通用する人になってほしい。優しさや気遣いを学ぶ機会になる」と考え、子ども食堂を運営する知人に依頼。狙い通り、「野球だけでは得られない優しさが身についた」という。
福岡大会開幕を控えた6月末の金曜夕方、部員5人がユニホームではなく、エプロンに袖を通していた。てきぱきと料理を配膳し、うれしそうに食事をする子たちを見守った。
大貝選手は「人のためになることができ、やりがいがある。交代制だが毎週やりたい」と話す。
星琳の選手たちはこの日の試合で、子ども食堂で学んだ「優しさ」や「気遣い」を何度も見せた。
四死球で一塁に向かう時はバットを両手で丁寧に地面に置く。フライを捕球する選手の近くに寄ってカバー。相手校への敬意も忘れず、適時打を放ってもガッツポーズなど派手に喜ばなかった。
7―0の八回コールド勝ち。大貝選手は「基本的なことを手を抜かずやった結果が出た」とはにかみ、「夏休みには食堂の子どもたちに試合を見に来てほしい」。その日まで勝ち続ける決意だ。(山本達洋、小勝周、波多野大介)