「せーのっ」 元気よく声を合わせて、練習用ユニホーム姿の野球部員たちが、テントを立てる。運動会などで見かける、白い天幕…
「せーのっ」
元気よく声を合わせて、練習用ユニホーム姿の野球部員たちが、テントを立てる。運動会などで見かける、白い天幕の大型パイプテント。しかし、この日の予定はいつもどおりの放課後の練習だ。
札幌市で2日連続で夏日が続いた6月上旬。札幌北陵高校のグラウンドでは毎日、2基のテントを立てていた。
昨夏から、30人以上の部員全員が休める日陰をつくる目的でテント設営を始めた。もともとあるベンチのひさしは数人しか休めなかった。大湊研一朗監督(47)は、テントがあることで「休憩中、生徒たちは体感で2~3度、低く感じるようだ」と話す。
直射日光を避けることで体力低下を防げる。新しい設備を導入するのは工事や費用が必要になるが、学校にある資材を利用することで、スムーズに実現できた。
田倉羽大主将(3年)は「ベンチが狭いので、広々と休めてうれしい」と話す。「バテずにいい練習をしたい」と語った。
夏場の部活動は、どんなことに注意をすればいいのか。
国際医療福祉大学成田病院救急科部長の志賀隆医師(49)は、熱中症を予防するため、気温は31度以上、暑さ指数(WBGT)は28以上、そのどちらかでも達したら可能な限り運動を避けることが必要だと指摘する。
それでも屋外に出る場合は、こまめな休憩と水分補給が大切だ。目安として1時間に1回、日陰やエアコンの効いた場所で休憩し、さらに15分に1回は水分補給を忘れないようにしてほしいという。
志賀医師によると、体が暑さや運動に慣れた高校3年生より、1、2年生で死亡例が突出して多いという報告がある。先輩、後輩という組織内の力関係が影響している可能性があり、下級生が「休憩をしたい」と言いやすい雰囲気づくりが大事だという。
志賀医師は「適切な対策をして、夏の思い出をつくってほしい」と話した。
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高校野球の現場が、暑さ対策に試行錯誤している。昨夏の甲子園では大会第1~3日、朝夕に試合開始する2部制を初導入。今大会では初めて夕方に開会式を実施する。北海道内でも厳しい暑さを迎える中、各校の取り組みを3回連載で紹介する。(朽木誠一郎)