日本各地で「梅雨明け」が続いている。今年の夏も、厳しい暑さになることが予想されるが、暑さとともに気になるのが「紫外線」…

 日本各地で「梅雨明け」が続いている。今年の夏も、厳しい暑さになることが予想されるが、暑さとともに気になるのが「紫外線」だ。炎天下でも試合があるサッカー選手たちは、紫外線とどう付き合っているのか? そして、蹴球放浪家・後藤健生が考える、サッカーをするうえで地球上で一番、厳しい紫外線にさらされる場所とは?

■日本の比ではない「中東」の日差し

 中東諸国の日差しの強さは、日本の夏の比ではありません。

 緯度の低い(赤道に近い)場所では、太陽の角度が北緯35度ほどの日本よりずっと高くなります。北回帰線(北緯23度26分)と南回帰線(南緯23度26分)の間では太陽が真上(90度)の位置まで達することもあります。

 つまり、太陽光はあまり空気に遮られずに地上に達するわけです。

 もう一つ、紫外線量の違いをもたらすのが標高です。

 ここまで読み進めていてくださった読者の方には、もう説明はいらないでしょう。標高が高ければ地表までの空気の層は薄くなります。しかも、高地では気圧が低く、空気自体が薄いのです。従って、太陽光は空気に拡散されることなく、そのまま地表に到達します。

 2つの要素、緯度と標高。この2つを考え合わせると、「赤道に近くて標高が高いところ」こそが、地球上で最も紫外線が強い場所ということになります。

■スペイン語で「赤道」を意味する国

 南米大陸の太平洋岸を南北に走るアンデス山脈。その中央部、現在のエクアドル、ペルー、ボリビアあたりが、その最も紫外線が強いところということになります。かつて、インカ帝国が栄え、そして、スペイン人の征服者(コンキスタドール)のフランシスコ・ピサロによって征服されました。

 赤道直下です。

 なにしろ、エクアドルという国の国名はスペイン語で「赤道」という意味なのです。ペルー、ボリビアはそれよりちょっと南に位置します。

 そして、人々は3000メートル以上の高原地帯に多く暮らしています。赤道直下ですから、標高の低い砂漠地帯やジャングル地帯は気温が高く、むしろ高原のほうが暮らしやすいのです。

■「力を発揮できない」慣れない選手

 ボリビアの事実上の首都ラパスは、4000メートルの高原にある盆地の中に発展した都市です。最も標高が低い谷底が都心になっており、高層ビルが立ち並んでいます。そして、最大のスタジアムもそこに建設されているのですが、それでも標高は3600メートル。富士山の頂上付近に当たります。

 しかも、最近はそのエスタディオ・オリンピコではなく、4000メートルの地にあるアルテ・プラーノのスタジアムを使うこともあるようです。ホームの利を最大限に生かすためです。高地に慣れていない選手は、力を発揮できないわけです。

 空気(酸素分圧)が少なく、紫外線量が多い過酷な土地なのですが、そこに生まれ、そこで生活している原住民であるケチュア人やアイマラ人にとってはそこが故郷です。

 空気が薄く、紫外線が強い所で何世代も暮らし続けているケチュア人やアイマラン人を見ると、たしかに胸板は厚く、いかにも肺活量が多そうですし、顔は紫外線のせいでみな真っ赤に日焼けしています。

 いや、日系人でもボリビア生まれの人にとっては、ラパスの薄い空気のほうが暮らしやすいようで、東京のねっとりした空気は耐えがたいようです。

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