<2025年全国高校野球選手権東東京都大会:開成ー小岩>◇6日◇1回戦◇明治神宮野球場 東京都だけではなく、全国的にも超…
<2025年全国高校野球選手権東東京都大会:開成ー小岩>◇6日◇1回戦◇明治神宮野球場
東京都だけではなく、全国的にも超進学校として知られている開成。東京大学にも毎年100人を超える合格者を輩出し、岸田 文雄前首相も同校野球部出身のOBとして知られている。チームを率いる青木秀憲監督も東大の出身で、東京六大学野球連盟の審判員でもある。毎年、徹底した打撃強化でチームを作り上げていくことでも知られている。その根拠としては、「練習時間が限られているので、その中でできることとしては個人練習の要素が高い打撃力の向上しかない」というものである。このことに徹底して、指導し続けてきている。
この春は、都大会で実践学園に初戦で敗れた。開成は男子校でもあり、超進学校だが実は、バンカラ気質の校風で、体育祭などもハードだということでも知られている。個人練習の打撃力強化というスタイルは、そんな開成の生徒たちのことに、この学校で敢えて野球をやろうという生徒たちにもあっているのかもしれない。
下町の小岩は、2001年に東東京大会を制して甲子園出場を果たした城東の当時の主将・茶川 剛史監督が率いている。周囲の環境などもあって、学校でなかなか打撃練習ができず、必ずしも恵まれた環境ではない。そんな中で着実にチームを作り上げてきている。
茶川監督としても「これまでで一番いい形のチームの仕上がりではないかと思っています」と好感触を得ているようだ。今年は野球部全体で3年生がマネージャーを入れて22人だが、ベンチ入りした20人中19人を占めている。そうした団結力と思いの結実も、こうした夏の大事な舞台では発揮されるのではないかとも思われた。
今春は深沢、南多摩中等を下して都大会へ進出している。そして本大会でも1回戦では国学院にコールド勝ちしている。駿台学園には2対4で屈したものの、チームとしてはまとまっているといいっていいであろう。
先発はここへきて、一気に伸びてきたという長身左腕の森田 涼央投手(3年)。その森田に対して、打撃に拘る開成は2巡目から攻略していく。3回以降に細かく得点を加えていって、6回で5対1と開成がリード。しかし、「そのまま逃げ切れるわけではない」という青木監督の思っていたように、小岩も粘りを見せて7回と8回に2点、3点を返して逆転。小岩としては、苦しいところをひっくり返しての展開ということで、いいムードかと思われた。
ところが、開成の選手たちはそれ以上に逞しかった。青木監督が「1点差だったら、後攻めでもあるし、こっちが有利な状態で迎えられるのだから、9回はしっかり守りなさい」ということだけを伝えると3者凡退。そして、1番からの好打順は一死後2番の阿部 悠人(3年)が死球で出ると、すかさず代走の齋藤 充貴選手(3年)を送り出す。「代走の役目は、先の塁を目指すこと」という約束通りに二盗を決める。これも、実はノーサインだったという。これに誘導されたかのように、7回からリリーフしていた3番谷沢 唯翔選手(3年)が左越二塁打、さらに二死二塁から、5番小宮山 敦太選手(3年)が右越打を放ってこれがサヨナラとなった。
青木監督は、「このチームは不思議で、秋春とサヨナラで勝っているんですよ。そんなにあるわけではないと言っていたんですけれどもね(苦笑)。こういう形になったのは、選手たちが自分でやっていくという意識からのものでしょうか」とチームを分析していた。
小岩の茶川監督は、「ウチは、どちらかというと守りのチームなので、初回の満塁などの得点機に先にしっかりと点を取って、それを守っていくというスタイルなんですけれどもね…。7回、8回にひっくり返せた粘りは評価できますが、最後を守り切れなかった…」と、悔いていた。
お互いミスもあったけれども、最後までどうなるのかわからないという展開。一生懸命に部活動として野球をやってきた生徒たちの集大成の試合としては、とてもいい内容だったのではないかと思えた。両校に拍手を捧げたい思いになれた試合である。